自ら「ない!」というだけでなく、私のことをよく知る周囲の人々も、「アガワには、ない!」「少しは落ち着け!」とはっきり言ってくださいます。

 こんなに長く生きているのに、どうして年齢なりの学習ができていないのか。年齢のことや人生について、あるいは死についてなど、ちゃんと考えずに生きてきたからでしょうか。

 仕事を始めたのが30歳になる1カ月前という、社会に出るのが人より10年近く遅かったせいかもしれません。以来、「スロースターターなので」を言い訳に、とりあえずその場その場をしのいでなんとか仕事を続けて今に至る。「ベテラン」という気持がいつまで経っても身につかないのです。

ADVERTISEMENT

「アガワさんは子どもだねえ」

 でも、そのおかげかもしれません。精神がなかなか老成しない。むしろ、できればずっと小学生気分でいたい。

 ときどき人様に言われるのは、

「アガワさんは若いねえ」

 ではなく、

「アガワさんは子どもだねえ」

 です。これがいいことなのか悪いことなのかはわかりませんが、そんな子どもっぽい私がにわかに大人ぶったところで誰も認めてくれないでしょう。

 そんなわけなので、本書が読者の皆様の「良き年の取り方」の参考になるのかどうかは、はなはだ怪しいかぎりです。

 でも、

「こういう高齢者もいるのか」

 と呆れ、笑い、そして日常の小さな元気の源にしていただければ、それだけで本書をしたためた甲斐があるというもの。どうか過度に期待せず、さらりとご一読いただければ幸いに存じます。

年とる力 (文春新書)

阿川 佐和子

文藝春秋

2026年5月20日 発売

次の記事に続く 「あれもダメ。これも食べちゃダメ」ではつまらない⋯【50代にして血管年齢78歳】それでも阿川さんが「美味しいものを我慢する人生」を選ばなかった理由は?