「作家は料理が好き」
響子 我が家には私が小さい頃からお手伝いさんがいました。大まかにはお手伝いさんが掃除、母が料理で。父(作家の田畑麦彦氏)が作った借金を返すために必死に書いていた時も、直木賞を取って売れっ子になってからも、料理はずっと母でした。
桃子 お昼時に祖母から、「フレンチトースト作るけど、食べる?」って声をかけられたりして。休憩のタイミングだったんだと思います。
響子 フレンチトーストも教室で習ったのだと思うんですけど、一般的な作り方じゃないんですよ。最初に牛乳に浸して、次にあたかも衣をつけるかのごとく卵液を纏わせる。
桃子 それも古くなったパンで。
響子 カチカチになったパンなら、牛乳がすーっと入っていくんです。それを焼くのではなく、油で揚げるんです。
桃子 最後にグラニュー糖をかけるから、カロリーのお化けみたいな食べ物の出来上がりです。
響子 中はプリンみたいにトロットロでした。
桃子 祖母は揚げ物を全然面倒がらないんです。コロッケを作るのなんて楽だって言ってました。ジャガイモには火が通っていて、揚げるだけなんだからって。料理を「食べるためのタスク」って捉えてなくて、手間をかけることが好きでした。
響子 料理をすることで脳が活性化して、それで書く方に向かう、母はそんな風に言ってました。
桃子 料理はクリエイティブだから、作家は料理が好きなんだって言っていたこともあるね。
響子 誕生日に作ってくれたマーブルゼリーは、今でも食べたい。
※佐藤愛子さんが娘・響子さんの誕生日に作ったマーブルゼリーとはどのような食べ物だったのか——。約6900字の全文で、愛子さんの「食」にまつわるエピソードが続々と明かされています。
※全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(杉山響子×杉山桃子「佐藤愛子 娘・孫対談『ぼけていく私』の食い意地」)。

