「7年遅らせることができる」
では、どのくらい運動すれば、認知症を防げるのだろう。
「2006年にアメリカの国立老化研究所が65歳以上の人を対象に行った疫学調査では、15分以上の運動を週に3回以上行うと、アルツハイマー病のリスクが35〜40%減ったそうです。そこで私たちも『15分の運動を週に3回』を、脳の老化を防ぐ生活習慣として勧めています」
気になる「歩数」についてはどうか。
「先のシドニー大学の研究は、7000歩で健康効果がほぼ最大化されると分析している。同様に最近の研究では、高齢者であれば1万歩も歩く必要はなく、最低ラインで日に3000歩、6000歩か7000歩くらいで十分だとするものが多いようです」
2025年11月に『Nature Medicine』で発表された最新研究も、「1日に5000〜7500歩歩くと認知機能の低下を平均約7年、3000〜5000歩でも約3年遅らせることができる」としている。
これはハーバード大学医学部を中心とする研究チームが行った大規模なコホート研究(集団追跡調査)で、まだ症状の出ていない50〜90歳の約300人を最長14年にわたって追跡したもの。
医学・生命科学分野においてトップクラスの学術誌に掲載されたこともあり「信頼性が高い」と久恒准教授は評価する。
この研究のミソは「少ない歩数でも効果あり」ということではない。実は、認知症予防の常識を変えるかもしれない重大な科学的知見が示されているのだ。
これまでアルツハイマー病の原因として考えられていたのは、アミロイドβという“蛋白質のゴミ”である。これが発症の10〜20年前から脳のなかに溜まり、「老人斑」と呼ばれるシミのようなものができることで、ニューロンがダメージを受け、認知機能に悪影響が出るとされてきた。それゆえ、アミロイドβの除去法が盛んに研究されてきたのである。
※本記事の全文(7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(梶山寿子「最新研究『歩く』は認知症、血管疾患を防ぐ」)。
全文では、以下の内容が語られています。
・歩いて一酸化窒素を生み出せ
・五感をフルに使って散歩する
・「50歳頃」が歩き方の境目
