最期まで歩くために本当に必要なのは…
青栁 お腹が妊婦さんのようにパンパンに膨れていますね。
萬田 これは、拳大のがんの4年後の姿です。でも、手足はさっき見せた患者さんと同じくらいガリガリですよ。最期まで歩くために本当に必要なのは、気力と根性です。大抵の人は、がんが大きくなったら死ぬと思っているから抗がん剤に頼るけど、抗がん剤は体を弱らせます。がんが大きくなっても体が弱らなければ死にません。そういう話をしたら、歯を食いしばって這うように歩いて、自力でトイレに行けるようになりました。そのうち普通に歩けるようになって、数週間したらごはんも食べられるようになりました。
青栁 今まで病院にいる患者さんは見たことがあっても、こんな患者さんの姿は知らなかったので、正直面食らっています。やはり、みんな最期まで自分の力で歩きたいんですね。
萬田 そうですね。だけど病院に入院していると、「困ったらブザーを押してくださいね」「オムツにしましょう」「立って歩いちゃダメですよ」と看護師さんが優しく言うでしょう。あれは患者からすれば、「そろそろ生きるのをやめなさいよ。諦めなさい」って言われているようなもの。だから、患者の家族には必ず言います。「オムツにしなさいって絶対に言っちゃダメだよ」と。
青栁 それこそ人としての尊厳ですよね。自分の足でトイレに行けるというのは。
萬田 そのあたりは、患者さんによっても違いますよ。歩くのが辛いからオムツを選ぶ人もいるし、ベッドから何度落ちてもトイレに行こうとする人もいる。僕はできるだけ患者さんの願いを叶える方針です。ポータブルトイレも患者さんにとってはオムツに近いのです。いわば“ポータブルトイレオムツ”です。実際に、トイレにたどりついて最期を迎えた患者さんもいました。
※寝たきりにならず、最期まで歩けるようにするには、何が重要なのか。この続きで詳しく語られています。約6900字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(萬田緑平×青栁幸利「『棺桶まで歩こう』が導く幸福なる最期」)。
