「精神的に成長」する非マッチョ的なRPG
『ポケモン』の主人公は、強いて言えば各地域のジムリーダーたちからもらう「ジムバッチ」を集めることがシステム上の成長要素になっていますが、これも高レベルポケモンが指示に従うようになったり、大会への出場資格を得たりなどするくらいで、主人公自身の戦闘能力向上というわけではありません。
このように戦闘から解放されたことで、「システムで語る物語」のレイヤーにおける一種のマッチョイズムからも解放されたのがポケモンの主人公であると言えるでしょう。旅を通じて肉体的に成長することがゲームの趣旨ではなく、見知らぬ土地、人々、ポケモンたちとの出会いを通じていわば「精神的に成長」することがテーマになっているのです。
また、RPGにおける主人公の成長は、それに伴って行けるエリアが広がっていく「フィールドマップの拡大」とも連動したゲームシステムでした。そのため、成長を主軸にしたRPGでは、最終的に世界全体を股にかけた壮大な冒険へと繋がっていくことが多く、その旅のスケールアップそのものがRPGの大きな魅力でもあります。
ところがポケモンにおけるフィールドマップは、それよりずっとスケールが小さく、例えば初代ポケモンの舞台である「カントー地方」はその語源が「関東地方」である通り、少年時代の田尻さん(東京都町田市出身)が自転車で行動していたぐらいの範囲をイメージした作りになっています。
田尻さんは、ポケモンにおける旅というのは「ある小学生の夏休みの1日」だと言っています。だから、「ドラクエ」と違って『ポケモン』では旅先で宿屋に泊まったりしません(ポケモンを回復させる施設はありますが、それは医療機関や託児施設のイメージです)。
そもそもが日帰りのイメージなので、子どもを送りだす親にも何の悲壮感もなく、「行ってらっしゃい」程度のリアクションです。もちろんアニメ版では、さすがにそれではエピソードの整合性がつかなくなるので、野営や宿泊の場面が生まれましたが、もともとのゲームはそういうスケール感なのです。
これもまた、『ポケモン』が「子ども視点RPG」を更新した表現のひとつと言えるでしょう。
