アニメ放送スタート、だが……
こうしてTVアニメ『ポケットモンスター』はテレビ東京系列で1997年4月1日に放送開始します。第1話の視聴率は10.2%でスタートし、5月は12%台、6月は14%台と、視聴率は着実に上昇していきます。夏休みを経て10月になる頃には17%台をマーク、11月には驚きの最高視聴率18.6%に達しました。これはもう、文句なしの大成功と言える数字です。ここからさらに、目前に迫ったクリスマス、そして子どもたちがお年玉を手にする正月を挟んだ年末年始商戦に向けて、関係者は大きな期待を膨らませていました。
ところが、そうした中、後に「ポケモンショック」と呼ばれる事件が発生します。1997年12月16日、アニメ『ポケットモンスター』の第38話「でんのうせんしポリゴン」の放送中に、視聴者に光過敏性発作が発生して30都道府県で651人が病院に救急搬送されました。
光過敏性発作とは、光刺激に強く反応した脳が興奮状態に陥り、様々な発作を起こすとされている症状です。この回では、背景が激しく点滅する演出があり、そのシーンが原因になりました。
この事態を受け、テレビ東京はすぐにポケモンの放送を休止し、同局の子ども向け番組『おはスタ』にて、「原因がはっきりわかるまで16日の放送を見直さないでください」と子どもたちへのお願いを伝えました。それ以外のポケモンの話題や関連コーナーも自粛しています。
この時のテレビ東京の対応で評価すべきなのは、すぐに外部調査チームを受け入れたことです。実は、精神科医である僕の父もこのチームに参加していました。チームはまず再発防止のためのガイドラインを策定します。そしてそれを、すぐに外部へも公開したのです。さらにこの件に対応したのは、テレビ東京だけではありませんでした。実は、NHKがこの年の3月29日に放送したアニメ『YAT安心!宇宙旅行(*1)』の第25話「まぼろしのオヤジ!」でも同様の事件が起きていたのです。ただ、その時点での報告数は、静岡県の病院で診察を受けた子ども4人(1人が入院)と比較的小規模だったため、外部に公表はされていませんでした。
12月18日、NHKは「アニメーション問題等検討プロジェクト」を立ち上げる記者会見の場でこの件を公表。「その時に原因究明をしていれば、今回の事件は起こらなかったかもしれない」として陳謝したのです。
当初、世間の反応には「ポケモン」や「アニメ」に対する抗議が、根拠のないバッシングへと拡大しかねないムードもありました。けれどもテレビ東京やNHKの素早い対応と情報公開、さらに他の放送局も調査検証を進めたことで徐々に冷静さを取り戻していきます。そして、これに類する様々な映像演出、さらには記者会見のストロボの点滅等でも同様の事態が起きる可能性があることがわかってくると、「子どもたちに大人気のポケモンが恐ろしい事件を起こした」というスキャンダラスな報道はそれ以上エスカレートせず、これは放送業界全体の問題だとする捉え方が大勢となっていきました。
