RPGとしてのゲームデザインとして、それまでの王道である『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』などの常識を覆す画期的な発明がいくつも盛り込まれていた『ポケットモンスター』。
発明のひとつに挙げられるのが「主人公自身は戦わないし、レベルアップもしない」という点だ。ポケモンはいかにして独自のRPG像を築き上げたのか。『国産RPGクロニクル 物語の革命者たち』の一部を抜粋して紹介する。
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ポケモンのゲームデザイン(2)成長しない主人公
ポケモンにおけるゲームデザインの第2の特徴、それは「成長しない主人公」です。
ポケモンではモンスターだけが戦闘し、主人公は戦わないシステムで、ここが「女神転生」シリーズや『ドラクエ5』と根本的に異なります。これらの先行作品では、あくまでも主人公がレギュラーメンバーとして戦闘の中心となり、そこにモンスターたちが入れ代わり立ち代わり参加するシステムでした。もちろんゲームバランス上で主人公キャラの強さや重要性はマチマチなのですが、物語上は「主人公も戦い、成長していく」ことが必須だったのです。
ポケモンではこの点を「モンスターのみが戦う」という形式に振り切ったことで、「戦わない、成長しない主人公」を実現しました。これは同時に「子ども視点のRPG」像を更新する表現でもあります。
ポケモン以前の「子ども視点RPG」の代表作は、『MOTHER(*1)』(1989年7月、任天堂)シリーズでした。『MOTHER』はノスタルジックなアメリカ風の土地を舞台に少年少女が冒険の旅を繰り広げるジュブナイルRPGなのですが、これはあくまでシナリオや設定のレイヤーの話。一方、ゲームシステムに関してはかなりストレートな『ドラゴンクエスト』フォロワーなので、主人公たちは普通に戦闘を通じてレベルアップ=成長していくことになります。
*1 糸井重里氏が企画・監修したRPGシリーズの第1作。現代アメリカ風の日常世界を舞台に、少年たちが超能力(PSI)を駆使し、不思議な事件や異星人「ギーグ」と戦う。武器はバットやフライパン、回復はハンバーガーなど、日常に根ざしたものばかりである。商業的には十分ヒットしたが、糸井氏は不完全燃焼感を抱き、自ら主導して続編『MOTHER2』の開発を始めた(詳細は省略)。なお、『MOTHER2』と初代『ポケットモンスター』の開発スタッフは、石原恒和氏など一部共通している。
ゲームには「テキストで語る物語」のレイヤーと、「システムで語る物語」のレイヤーが存在します。『MOTHER』は、テキストのレイヤーでは魔法を「超能力」、武器を「バット」等の設定にすることで、中世ファンタジー世界の英雄譚を現代の少年少女に置き換えているのですが、ゲームシステムのレイヤーでは「旅を通じて筋骨隆々に成長していく冒険者の物語」を引き継いでしまっており、そこに大きなギャップがあるのです。
もちろん『MOTHER』は、このようなギャップを半ば意識的にユーモアに転化している作品でもあるので、このこと自体が『MOTHER』への批判にはあたらないのですが、ポケモンがそこから一歩進化した「ジュブナイルRPG」となったことは確かでしょう。

