文春オンライン

2018/09/04

佐賀北よりも脆弱に映った選手層

 今は、強豪私学全盛時代である。劣る選手層を工夫で補うには、公立と私学の戦力差はあまりにも開き過ぎてしまった。

 もはや第二の佐賀北は、現れないだろうと思っていた。ところが、あれから11年、金足農が現れた。

 失礼ながら、次で負けるだろう、次で負けるだろうと思いつつ、勝ち上がっていく様は、まさに佐賀北を彷彿とさせた。

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 いや、まだ佐賀北の方が選手層は厚かった。投手陣は久保貴大と馬場将史の2人がいたし、代打の切り札、走塁のスペシャリストと、控え選手も巧みに起用していた。

 そこへいくと、金足農は、エースの吉田輝星の力量は突出していたものの、総合力という点では佐賀北以上に脆弱に映った。

秋田県大会から合計1517球を投げた吉田輝星 ©文藝春秋

 もし、金足農が勝ったら……と夢を見かけた。

 だが、結果をみて、やはり、これが現実なのだと思い知らされた。

 2-13。

「ここ10年でベスト4にいった公立校は2校だけ」

 もちろん、決勝にたどり着くまでに吉田がここまで酷使されていなければというクエスチョンは残る。しかし、それでも結果は覆らなかっただろうというのが実感だ。ここまで点差は開かなかったかもしれないが、やはり10回戦って1回勝てるかどうかと言っていいほどの実力差はあった。

 ただ、「夢」対「現実」の対戦成績など、いつの世も、どの世界でも、その程度のものだろう。

 昨年、百﨑に再会した時に、こんな話をしていた。

「年々、公立が勝つのは難しいと思うようになりましたね。周りの公立高校の指導者も、そう言っています。夏の大会に限って言えば、ここ10年で、ベスト4以上いった公立高校は2校しかない(08年の浦添商、09年の県岐阜商)。うちも公立校でもできる、ということは示したと思いますけど、やはり簡単なことではない」

閉会式での金足農業。来年、公立高校は再び決勝の舞台に帰ってくるだろうか ©文藝春秋

「11年で2度の奇跡」をどう受け止めるか?

 ところが、この夏、金足農は9人だけで、しかも1回戦から登場し5勝を挙げて準優勝を果たした。優勝と準優勝には決して埋まらない溝はあるものの、佐賀北の優勝に限りなく近いミラクルだったと思う。

 もちろん、今年の金足農に関しては、選手層の薄い公立校が超高校級のエースを持った場合、そのエースにここまで負担を強いなければ勝ち上がれないのかという「引っかかり」は残った。どのチームも真似できることではないし、できるなら避けるべき戦い方だった。

 そうした問題点も含め、11年で2度、公立高校が奇跡を起こしたという事実をどう受け止めるか。個人差はあるだろうが、「公立校でもできる」ということを示したという意味においては、十分過ぎるデータになったと言えるのではないか。

 金足農監督の中泉一豊は、こう語っていたものだ。

「絶対に勝つんだって気持ちが大事。その熱意がないと」

 夢は破れた。だが、確かに夢に触れた夏だった。

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