私は駄目なリーダーです。
自分で言うのも何ですが、一番いけないのは「
「あ、これなら私が自分でやったほうが速いな」
で、部下がやっているのを見て「あ、これなら私が自分でやったほうが速いな」と思ってしまいます。もちろん、実際には専門のスキルを持っている部下が手がけたほうが数倍速く、品質も良いというケースが多いわけなんですが、仕上がりが自分の期待しているものと違うと「ええい、私がやる。そこをどけ」と言いたくなってしまうのです。で、偉そうに言う割に思った通りにならなくて、
結婚前までは、そういう問題をクリアできないのは「私の頑張りが足りないからだ」と思っていました。私が思う、要求する品質にチームの成果が達しないのはチーム内のコミュニケーションが不足しているんだとか、働く時間が不充分なのだと判断しがちなリーダーなので、私と一緒に仕事をした人たちはみんな死んだような魚の目になって疲弊していきます。あのころは若かった。それでも、少ない予算と短い期間でこれだけの仕事を達成できた、という満足感はみんな持っていたようですが、何よりリーダーである私が滅私奉公型の働き方でしたから、力尽きるまで働くのが人生なんだとやり続けていたら、今頃は大変なことになっていたことでしょう。
「ええい、私がやる」から脱したのは、ごく最近のことです
私と結婚してくれた家内が、私の働き方を見て「そんなんじゃ身体を壊すよ」と言ってくれて、また、子どもができてからは家族と一緒にいる時間を大事にしたくなりました。その後は「クリアするべき目標を明確にして、求める品質も最初に固めておくべきだ」という働き方に切り替え、結果として生産性も上がって随分落ち着いてきたのは事実です。いまは、育児と介護は大変だけど個人的にはとってもハッピー。ですが、それでもなお仕事の進め方を切り替える数年は「ええい、私がやる。そこをどけ」をたびたび起こしては余計な仕事を背負い込んで徹夜を繰り返し疲弊することになって、ああ、私は経営には向いていないのだと悟ることになるわけであります。他人に任せてからは投資先が勝手に上場したり、若い人がやりがいを取り戻して好き放題できるようになったり、まあいろいろ浮き沈みはありつつも楽しくやっています。なんだ、私は最初からコミュニケーションのハブ役に徹して、企画立案や調達する予算、達成する品質の目標設定ぐらいまでを精密に組み上げることにのみ神経を集中していれば上手くいくんじゃないかと割り切れるようになった、のはごく最近のことです。いわば、仕事の見積もりにすべてがかかっているわけですよ。