「この時間の電話はロクなことがない」
電話に出ると、嫌な予感は的中した。ツアー中止のお知らせだった。その日だけピンポイントで大荒れの天候となり、池島に渡るフェリーの欠航が決まったというのだ。前夜は晴れていたというのに、なんということだ。
藁にもすがる思いで、翌日に代替開催するなどの救済策はないかと尋ねたが、「絶対に無いですね」と一蹴されてしまった。数ヶ月前から準備を整えていただけに残念すぎる結末だが、天候ばかりはどうしようもない。
ということで、長崎まで行ったにも関わらず池島に渡ることすら叶わなかった。そのため、ここからは以前、池島を訪問した時の模様をご紹介したい。
定員12人の小さな船で池島へ
池島に渡るルートは複数あるが、この日は神浦港から船に乗った。定員12人の小さな船で、料金は370円、15分の短い船旅だ。
池島が近づいてくると、上陸前からその姿に圧倒される。
港の向こうには工場の廃墟群が、その向こうの山の上には巨大な選炭工場の廃墟が見える。
興奮しながら船を降りる。港の周辺には人の気配があり、住居のほか当時は商店もあった。
“港ショッピングセンター”というストレートな名前で、日々の生活に必要な物は一通り揃うのでありがたい存在だったが、残念ながら2016年に閉店してしまった。
この日は午後のツアーに申し込んでいたが、朝から島に上陸し、島内を一周しようと考えていた。早速、島の東端にある港から、北寄りの道を西に向かって歩きはじめる。
港の周辺には鉱山施設の痕跡があるほか、発電所の巨大な廃墟が存在感を示している。
7700人が暮らしていた痕跡として、島内のいたるところに4階建てのアパートが残っている。
ほとんどが無人で廃墟化しているが、希に人が住んでいる建物もある。ほぼ無人と化したアパートを改造して暮らしている様子を観察するだけでも、とても楽しい。
アパート群とともに、気になるものがあった。道路沿いに伸びている多くのパイプだ。道路と並行し、時には交差し、複数のパイプが、否が応でも目に入る。これは水道管で、池島では地中に埋めるよりも地上にあったほうがメンテナンスしやすいという理由から、水道管の多くが地上に露出している。
廃墟と現役が混在するアパート群の中に、営業しているお店があった。
“かあちゃんの店”は、島唯一の食堂として、また2016年に港ショッピングセンターが閉店した後は島唯一の売店として重宝されていたが、こちらも2023年に閉店してしまった。
そのため、現在の池島には食堂も売店も存在せず、島外で買って持ち込むしかない。











