先天性の難病「顔面動静脈奇形」で鼻と上唇が変形し、40回以上の手術を受けてきた河除静香さん。現在は見た目による差別を受けてきた体験を芝居にし、地元・富山県を中心に上演会も行う。

 そんな河除さんに、学生時代に受けたいじめや、就職時の困難などについて話を聞いた。

河除静香さん 

◆◆◆

ADVERTISEMENT

「鼻ってこんなに空気が入ってくるんや」という驚き

――これから鼻を作る手術をされるということですが、今呼吸がしにくいとかはないですか?

河除静香さん(以下、河除) 鼻がぺちゃんこになる前から鼻呼吸はしづらいほうではあったんですけど、今はよりしにくいですね。たまにピンセットとかで鼻の穴を広げるとすごく空気が入ってきて、「ああ、メッチャ息が吸いやすい」ってなります。

 実は私自身8年前に初めて知ったんですけど、左の鼻の穴がなかったんです。

――見た目に穴はあるけど、実際には穴がなかった?

河除 洞窟みたいに途中で終わっとったというか。私もずっと知らなかったんですけど、開通してなかったみたいです。で、8年前に左の鼻を開通してもらったら、「鼻ってこんなに空気が入ってくるんや」って驚きました。

 ただ今はそれもぺしゃんこになってしまったので、改めて鼻を作る手術をするということです。

――嗅覚に変化はありましたか。

河除 嗅覚は20年ぐらい前に失ってしまって。放射線の治療をしたんですけど、その副作用でにおいが分からなくなってしまったんです。

 次男坊が生まれた時、うんちのにおいがしとるのか分からんくて、長男に「おむつ臭い?」とかって言って確かめてもらっとったがですよ。

 その時はなんでか全然分からんかったがですけど、徐々に完全ににおいがしなくなって、「あっ、放射線の治療のあれや」と分かったんです。

においがわからない寂しさ

――においがわからないことで生活に支障が出たことも?

河除 めちゃくちゃ不便いうのはないですけど、人との会話で困ることはありますね。職場は中学校なんですけど、「今日の給食いいにおいするね」って言われると、「(小声で)うん、そうやね……」って(笑)。

 言う時は正直に言うんですけど、ちょっとした会話の中で全部理由を話すわけにもいかんので、そういった場面で難しさを感じることはありますね。

 あと、ガスのにおいとかが分からんがは怖いですけどね。

――危険なにおいが感知できないのは怖いですよね。

河除 今うちはIHなんですけど、焦げ臭いとかが分からんので困るっちゃ困るけど、どうしても困るというのは、ないと言えばないです。ただ、寂しいのは寂しいですね。

――そうですよね。

河除 徐々ににおいがなくなったから、ご飯がおいしくないとかはないですけど、やっぱり一番寂しいのは、子どものにおいですかね。とにかくあらゆるもの全てのにおいを、もう一生嗅ぐことはできんのやと思ったらすごく怖くなることがあって。

河除さんと夫、そして長男

 突き詰めて考えると失ってしまったものの大きさを直視することになるから、考えないようにしてます。