妙に殺風景な店内にあったのは…
外観は、平均的な駅そばと変わらない。しかし、一歩店内に足を踏み入れると、異様なムードに包まれる。厨房がなく、妙に殺風景なのだ。店内にあるのは、客席と大型の券売機のように見える自動販売機。実はこの自動販売機が、そばの調理提供マシンなのだ。つまり、厨房がなく店員も常駐していない、完全無人営業の駅そばなのである。
そばの自動販売機と聞いて“レトロ自販機”を連想するのは、私だけではないだろう。あらかじめ麺と具材を盛りつけた丼をセットし、お金を入れてボタンを押すと湯が注がれ、遠心分離作用で麺を湯がき、最後につゆを注いで提供される自販機だ。昭和生まれなら、一度は見たことがあるのではないだろうか。一時期は観光地近くのドライブインや国道沿いのオートレストラン(自動販売機を集めた施設で、ゲームコーナーを併設していることが多い)などでよく見かけたものだ。しかし、その後廃れ、見かける機会は激減してしまった。保存性に優れたカップラーメンに取って代わられた印象だ。
上野駅のセルフ駅そばのそば自販機は、そのレトロ自販機を時代に即して進化させた形といえるかもしれない。いってみれば、令和版そば自販機だ。
アナログなレトロ自販機とは違い、令和のそば自販機はデジタル化された部分が多く、冷凍そばの急速解凍も可能にしている。茹でそばを使う場合、どうしても保存性に難が生じ、無人営業であっても頻繁に従業員が訪問して商品の入れ替え作業などを行わなければならない。冷凍そば、それも麺だけでなくつゆや具材がセットになった状態で冷凍しておけるのなら、保存性の課題をクリアできる。
早速、食べてみることにしよう。自販機内部の限られたスペースにセットするのだから、メニューのレパートリーを増やすのはなかなか難しい。現状では、メニューは5種類となっている。そのなかから、もっともオーソドックスな「たぬきつねそば」を選択。なお、私が訪れたときには精算に現金を使用できず、交通系ICカードなどキャッシュレス決済のみの対応となっていた。(つづく)
