「本当に嫌な異動」の対処法
高橋 例えば、テレビ番組を作りたくて入社したのに営業に配属されて、2、3年経っても希望の部署に行けないような「本当に嫌な異動」だったらどうしますか?
坂井 実は、前職のDeNAはそれで辞めましたね。当時、会社からいくつかキャリアオプションを提示されたんですが、このレールに乗って走り続けた先に、自分が「本当に欲しいもの」があるかと考えた時、それがないことに気づいてしまったんです。
高橋 「本当に欲しいもの」って何だったんですか?
坂井 両親にいいマンションを買ってあげたいとか、自己破産した家で育った自分と結婚してくれた妻に大きな家を建てて恩返しをしたいとかですね。でも、その会社で役員になり成果を出すために時間軸を長く投資していった延長線上には、自分が納得いくような報い方はないと気づいたんです。
結構器用なサラリーマンだったので、そこにいる理由、ナラティブを人工的に作ることは絶対できたと思います。でもそれは虚構なので、違うなと。耐えた先に自分の本当の欲しいものがあるのかを問い、「イエス」でなければ耐えても無駄だと思っています。
高橋 耐えた先に欲しいものがないなら、辞めてしまおうと。自分の核となる、目指しているものをしっかり持っているんですね。
自分が参加しているレースのトップに憧れるか?
坂井 その考えに至ったのは、『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』という本がきっかけだったんです。そこで言われていたのが、「自分が参加しているレースを理解しろ」ということ。そして「そのレースでトップを走っている人を想像し、自分がその人に憧れるかどうかを考えろ」という教えでした。
高橋 大事だな~!(笑)
坂井 憧れというのは主観的な価値観なので、他の人の幸福の形を否定するわけではありません。ただ、前職では「このレースのトップには憧れないな」と思ってしまったので、辞める決断をしました。
高橋 なんかそれ、分かる。私はテレビ東京を41、2歳で辞めたんですが、もっと若い30歳くらいの頃は、社内に憧れる先輩が何人かいたんですよ。でも、40歳前後になるとみんな現場を離れて管理職になっていく。嫌な人になるわけじゃないんだけど、管理職になった先輩にはあんまり憧れを持てなくて。自分の憧れの人がそのあたりの年齢でいなくなってしまうんですよね。
坂井 どういう人が残りやすい会社なのか、という構造の問題でもありますよね。起業家精神を持って入社する人が多い会社でも、長くいるとどうしてもリスク感度が高すぎる人しか残らなくなる。だからこそ、自分のレール、つまり自分が参加しているレースのトップを想像して「違う」と思ったら、辞めた方がいいと僕は思っています。

