さて、忙しい現代社会ではついつい食事をなおざりにしがちです。

会社の昼食はできあいの弁当やファストフードで済ませ、仕事中に小腹が空いたと言ってはお菓子をつまみ、家に帰ればインスタント食品を口に放り込む……。

一時的な飢えはおさまるでしょうが、これでは本当に必要な栄養が補給されません。古代ローマの賢人セネカも言うとおり、「自立への大いなる一歩は満足なる胃から始まる」のです。

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「地中海食」で脳機能が改善する

近年では「食事と集中力」に関する研究が進み、信頼性の高いレポートが多く出ています。なかでも興味深いのは、ディーキン大学による2016年の系統的レビューです(※6)

このなかで研究チームは「地中海食」に関する18件の研究をまとめ、「食事で集中力は高まるか?」という疑問に精度の高い答えを出しました。

「地中海食」はイタリアやギリシャに古くから伝わる伝統食のことで、野菜、フルーツ、魚介類、オリーブオイルなどをたっぷり食べ、ファストフードやインスタント食品を徹底的に避けるタイプの食事法です。具体的なメニューとしては、全粒粉のラザニアやボイルサーモン、フェタチーズとトマトのサラダなどが定番になります。

いかにも健康に良さそうな食事法ですが、その効果は体調の改善だけにとどまりません。まずは論文の大きな結論を見てみましょう。

・地中海食を徹底するほど脳機能が改善し、ワーキングメモリ、注意の持続力、セルフコントロール能力などが向上する
・その効果は、国籍、性別、年齢を問わずに確認された

「正しい食事」が集中力の土台になる

本書でも紹介しましたが、「集中力」とは、ワーキングメモリや注意力といった各能力の複合体を意味します。すなわちこの研究は、健康的な食事を実践すれば、どんな人でも集中力が上がることを示したわけです。

もちろん、ここで扱われたデータはすべて観察研究であり、必ずしも地中海食が集中力に効くと実証されたわけではありません。その点で注意は必要ですが、脳機能の働きが食事に左右されることはほぼ確実です。