子どもたちのさまざまな質問に、各分野の専門家が「先生」として回答する「NHK夏休み子ども科学電話相談」。「昆虫」「天文・宇宙」「鳥」「心と体」それぞれの分野から、4人の先生たちの子ども時代についてインタビューしました。

 今回は、「鳥の川上でーす」の挨拶でおなじみの「鳥」の先生、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員の川上和人先生にお話を伺います。

「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」(新潮社)という著書をお持ちの川上先生。一体どんな人?

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テレビっ子だった子ども時代

―― 先生の子ども時代について教えてください。

川上 テレビっ子でした。土曜の夜は「オレたちひょうきん族」を観ようか、「8時だョ!全員集合」を観ようか毎週悩んでいました。裏番組同士なんですよね。

 

 あと、萩本欽一さんが隆盛の頃だったので、「欽ドン!」があって、「欽どこ」があって、「週刊欽曜日」があって、それをウッシャッシャッシャッシャって笑って毎週観てる、そんな生活でした。

 水曜日は水野晴郎さん、日曜日は淀川長治さんの「この映画がどれだけ面白いか、素晴らしいか」という解説を聞きながら映画を観るのも大好きでしたね。

―― アウトドアは好きではなかったのですか。

川上 父親が山好きだったので、長期の休みになると山でキャンプをすることもあったんですけれども、僕自身は好きってほどでもなかった(笑)。 「そういうもんだ」という感じで連れて行かれていました。

決断を先延ばしにした結果、行き着いた「鳥類学」

―― 鳥の研究を仕事にするまで、どのような道のりがあったのでしょう。

川上 結論から言うと、決断を先延ばし、先延ばしにしていたら行き着いたんです。

 大学を選ぶにあたって、「これをやりたい」というものが特になかったんですよね。でも、進路はある程度選ばなきゃいけない。そこで、選択肢を狭めないでおけるよう、東京大学の理科2類に進学しました。最初の2年は農学やら生物やら色々学んで、3年目に専攻を決めるシステムなので、決断を先延ばしできる。

 鳥との出会いはこの頃です。大学一年の頃、サークル紹介のイベントを回っていて、たまたま行き当たった生物サークルに入りました。サークルでバードウォッチングをしたときに双眼鏡を渡されて、生まれて初めて双眼鏡で鳥を見たんですが、双眼鏡って覗いたことありますか?

―― あまりないです。

川上 ないですよね。僕もちゃんとした双眼鏡を覗いたのはそのときが生まれて初めてだったんですけど、双眼鏡って遠くのものがはっきりと見えるんですよね(笑)。当たり前なんですけど、まずその性能に僕はすごく感動した。

 

 そのうち、横で先輩が「あれはなんとかシギや」とか言う。「あっすごい」と思っていると、今度は似たような鳥を「こっちはなんとかシギだ」とか言う。全く見分けがつかないものを見分けてしまうので、「あっ、この人はすごい人なんだ」とか思うわけですよ。

 そこから先はなんというか、「ポケモンGO」みたいに色々な種類の鳥を探すのが楽しくなった。チェックリストの中で、「これは見たことがある」「これは見たことがない」とチェックをつけていって、見たら、チェックをつけて「1種見たやつが増えた」って。これはもう単純にゲーム感覚です。