ファンから絶賛された『ヌードの夜』
劇画家の石井隆が監督した『ヌードの夜』(1993年)ではヒロインの名美を演じた。同作は、石井が自身の劇画を脚本家や監督として映画化した「天使のはらわた」シリーズの1作で、名美はそれまでにもさまざまな女優が演じてきたが、石井は余に「名美のイメージにもっとも近い」と惚れ込んで起用したという。シリーズのファンからもどんぴしゃのキャスティングだと絶賛された。
同作について余は《舞台は志が同じでないといっしょにつくっていけないものですが、映画はたとえ価値観や方法論が違っても逆にそれが刺激になったりするもので、特に今回の『ヌードの夜』(中略)なんて私のいつものやり方では絶対うまくいかなかったと思います》と語っている(『エフ』1994年2月号)。
劇団の看板女優として人気を集め、映像の仕事も徐々に増えていくなかでも彼女は、《女優って株みたいなもの。今がいいから次もとは限らないでしょ。だから演じられるものをたくさん持っていたいですね》とあくまで冷静だった(『週刊文春』1989年3月2日号)。
「演じられるものをたくさん持っていたい」との言葉どおり、東京壱組の公演では、しわくちゃのおばあちゃんや、奇妙な指圧師、痔の手術が専門の医者など、バラエティに富んだ役どころを演じた。上記の発言の出てくる記事では、往年のコミックグループ、クレイジーキャッツの「自分も楽しんで人も楽しませて」という世界に憧れ、自分でも油断するとすぐ三の線に行ってしまうとも語っていた。
劇団の外でも、神田明神の女将門太鼓グループに所属して和太鼓を叩き、海外公演に出かけたこともあった。伝統芸能ではこのほかにも、仕事で習得する必要があって三味線や民謡、都々逸、浄瑠璃などもかじった。とくに三味線は相性がよかったのか、もっと学びたいとその後も稽古に通い続ける。さらに沖縄や奄美の弦楽器である三線も、前出の『うみ・そら・さんごのいいつたえ』のロケ中、宿泊先の近くでその音色が聞こえてきたのがきっかけで、東京に戻ると新宿の沖縄料理店で習い始めた。
