100年の歳月を経て日の目を見た

 当時、政府はファイファー菌を原因と仮定して作られたワクチンを、国を挙げて人々に推奨していた。

 しかし、原因が異なるワクチンには当然ながら効果はなかった。この政策の失敗については、のちに内務省衛生局も自らの報告書の中で認めるところとなる。

予防ポスター(内務省衛生局編『流行性感冒』所収/国立国会図書館デジタルコレクションより)

 もしウイルスの存在を前提とした正しい予防策や研究がこの時点で進んでいれば、国内外の膨大な感染者数や死亡者数は、確実に抑えられていたはずである。

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 国家を揺るがす大流行のさなか、歴史に完全に埋もれてしまっていた日本のインフルエンザ研究。それが現代の国際的なウイルス学の権威によってようやく日の目を見ることとなった。

 45万3,000人以上の命が失われた凄惨なパンデミックの記憶の底には、世界に先駆けて目に見えないウイルスの正体に肉薄し、真実を証明しようとした3人の日本人医学者がいた。

 彼らの不屈の探究心は100年の時を超えた今、私たち同じ国に生きる後生にとって誇りとして歴史に刻み直されている。

<参考>・久野明子『鹿鳴館の貴婦人大山捨松 日本初の女子留学生』(中央公論社/1988年)
・速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ――人類とウイルスの第一次世界戦争』(藤原書店/2006年)
・内務省衛生局編『流行性感冒 「スペイン風邪」大流行の記録』(平凡社/2008年)
・アルフレッド・W・クロスビー、西村秀一訳・解説『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック【新装版】』(みすず書房/2009年)
・内閣感染症危機管理統括庁/川名明彦「スペインインフルエンザ」(2018)
 https://www.caicm.go.jp/houdou/article/feature/backnumber/kako_01.html
 https://www.caicm.go.jp/houdou/article/feature/backnumber/kako_02.html
・海上自衛隊幹部学校戦略研究会コラム157「1918-19年インフルエンザ・パンデミックと帝国海軍 ~新型コロナウイルスに対峙する海上自衛隊への過去からの警鐘~」(2020年)
 https://www.mod.go.jp/msdf/navcol/index.html?c=columns&id=157
・内務省衛生局編、西村秀一訳『現代語訳流行性感冒 一九一八年インフルエンザ・パンデミックの記録』(平凡社/2021年)
・山内一也『インフルエンザウイルスを発見した日本人』(岩波書店/2023年)

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