20世紀初頭、世界中を席巻したスペイン・インフルエンザ(スペインかぜ)。当時、世界人口の4分の1に相当する約5億人が感染。日本国内でも人口の4割に当たる約2380万人が感染したとされるが、今では“忘れられた感染病”と呼ばれている。(全3回の1回目/つづきを読む

当時の予防ポスター(内務省衛生局編『流行性感冒』所収/国立国会図書館デジタルコレクションより)

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「スペインかぜ」は「かぜ」ではない?

 実際のところ、私たちはその名前を知っていても、病としての実態についてはほとんど何も知らないのではないだろうか。

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 例えば、名前に「スペイン」と付いているが、この感染症の発生地はスペインではない。このことは医療従事者や研究者の間では常識だが、一般には意外と知られていない。

 また、当時は「スペインかぜ」とも呼ばれ、現代でもその通称を耳にすることが多いが、これも誤解を生んでいる側面がある。そもそも「風邪」と「インフルエンザ」は医学的にまったく異なるものだ。

 インフルエンザの和名は「流行性感冒」。この「感冒」が風邪と同義であるために混同されたらしい。言うまでもなく、インフルエンザはインフルエンザ・ウイルスが引き起こす特有の感染症である。

 では、なぜこの感染症にスペインの名が冠されることになったのか。その背景にあるのは第一次世界大戦だ。

なぜ「スペイン」と名前に付いたのか

 当時、ヨーロッパの主要国は激しい情報統制を敷いていた。どの政府も前線の士気低下や国力低下を恐れ、自国で深刻なインフルエンザが流行している事実を隠していた。

 一方、スペインは戦争に参加せず中立国だったために、国内の被害状況をありのままに報道。さらに、スペイン国王や大臣までもが感染したニュースが報じられたことで、世界中の目がスペインに集まることになった。

 こうして、あたかもスペインが発生源であるかのような誤解が生まれ、世界中で「スペイン・インフルエンザ」という呼称が定着してしまったのだ。

 最初の症例が確認されたのはアメリカだが、そこが発生源であるとは言い切れない。現代の研究でも中国南部を起源とする説、ヨーロッパもしくはアフリカで生まれたとする説など、諸説ある。

 それでは、日本におけるスペイン・インフルエンザの流行は、一体いつ始まったのだろうか。