1日の食費は500円、腹を満たすためにポテトを食べ続け……
少年は父子家庭の一人っ子であり、毎日の食事は父親から渡される500円で、すべて賄っていたことが死後明らかになりました。「500円で調理の必要がなく、たくさん食べられてお腹が膨らむものを」と考えて思い浮かんだのが、子どもでも気軽に立ち寄れるハンバーガーチェーン店のフライドポテトだったのでしょう。
少年は、ほぼ毎日、油の多いフライドポテトだけを食べ続け、腸閉塞を起こして苦しみながら死にいたりました。栄養バランスが極端に偏った生活が原因だったことは間違いありませんが、もうひとつ不確定ながらも、この少年固有の事情もありました。
人間の腰椎(腰あたりにある背骨)は通常、5個あります。ところが、CTで腹部を撮影したところ、少年には6個の腰椎がありました。まれに腰椎が6個ある人はいますが、骨が1本多いということは、腹部のスペースが標準より広い可能性があったと考えられます。
要するに、普通の人よりもお腹がちょっと広い。けれども、小腸の長さは標準だったため、消化の悪いフライドポテトの過剰摂取で胃にガスがたまって膨らみ、余っている腹部の空間に小腸の端が入り込んで壊死した可能性もあります。
CTと解剖だけでは、食生活と腰椎の因果関係を明言することまではできませんでしたが、私はおそらく無関係ではなかっただろうと考えています。
死亡診断書に病名の「腸閉塞」としか書くことはできませんでしたが、背景には1人親家庭の貧困や、福祉制度の取りこぼしが関係していることは明らかです。少年に手を差し伸べられる大人が1人でも身近にいれば、と心から残念に思わずにはいられない解剖でした。
