事件・事故で亡くなった死体や、死因が分からない「異状死体」を解剖し、身元確認や死因の究明を行う「法解剖医」。その現場では壮絶な死体と相対することも、珍しくないという。
解剖の最前線で働く飯野守男氏による新著『法医学教授が教えている 死体の授業』(飛鳥新社)から一部抜粋し、実際に飯野氏が目にしてきた異状死体の数々を振り返る。
◆◆◆
まるでミイラ……解剖医が実際に目にした「壮絶な死体」
異状死体には、さまざまなバリエーションがあります。この本を読んでいるあなた自身も、もしかしたら偶然が重なれば、日本でミイラ死体となって発見される可能性もゼロではありません。
実際、私も過去に複数のミイラ化された死体を解剖しました。高温多湿な日本の気候はミイラ化には不向きですが、過去にはこんなケースもありました。
アパートの自室で死亡していた中年男性は、布団の上で腐敗がいちじるしく進行した「高度腐敗」の状態となって発見されました。1人暮らしのワンルームは施錠されており、外傷もないため事件とは考えにくい状況です。
体の大部分はすでに組織の腐敗が進んでおり、骨が飛び出て、四肢の末端はカラカラに乾燥してミイラ化していました。死亡した時期が冬だったため、室内で乾燥だけが進んだものと考えられます。解剖すべき肉体の痕跡がほぼ失われた状態ではありましたが、死因不明の「病死の疑い」と判断しました。
では、この男性が冬ではなく夏に死亡していたら、どのような姿になっていたと思われますか?
気温が上昇する真夏では急速に腐敗が進みます。発見が遅れた場合は腐敗ガスで体が大きく膨らみ、液体が浸み出した末に、やはり高度腐敗死体となっていた可能性が高いでしょう。
密室であればまだしも、もし「夏の夜に窓も網戸も開けて寝ていた」状態で死亡したら、あっという間に腐敗が進み、それと同時にハエが大量に集まって卵を産み付け、ウジ虫が肉や内臓を食べ尽くし、短期間で白骨死体となることもあります。
「夏の夜に網戸を開けて寝ていた」、それに近い状況で死亡した男性が、わずか2週間で完全に白骨化して発見されたケースもありました。死体に集まる虫には、いくつかの種類がありますが、代表的な虫といえばやはりウジ虫(ハエの幼虫)でしょう。
