さまざまなジャンルの音楽とダンスを吸収し、咀嚼した上で斬新なパフォーマンスを提示したマイケル。彼に強い影響を及ぼしたアーティストたちとその仕事を振り返る。
マイケルをつくったのは誰なのか?
マイケル・ジャクソンの歌をひと声聞いただけで、あるいは腕や脚の動きを一瞬見ただけで、ぼくたちはそこにとてつもない“天才”を見る。感じる。そして、圧倒される。が、その天才性の裏側には幾人もの先達の功績が横たわっているのだ。
子供時代、ジャクソン5のリード・シンガーとして活動し始めたころのマイケルはソウル・ミュージックのパイオニアたちの躍動を研究し学びながら自分のスタイルを作り上げた。そんな先達のひとりがジャッキー・ウィルソンだ。彼は“ミスター・エクサイトメント”という異名通り、観客を熱狂の渦に巻き込むパフォーマンスでおなじみ。ステージで膝をつき、汗を飛び散らせながら絶叫。舞台の端から端までを使い切るウィルソンの熱いスタイルに幼いマイケルは大いに触発されたらしい。1984年のグラミー賞で『スリラー』が8部門を制覇した際も、マイケルは受賞スピーチで、授賞式の数週間前に他界したばかりだったジャッキー・ウィルソンの名を挙げ、彼への深い敬意を表明していた。
そしてジェイムス・ブラウン。“ファンク”という音楽スタイルを確立したこのファンキー大統領、JBからの影響も大きい。マイケルは公の場で何度も「子供のころ、寝る間も惜しんでテレビにかじりつき、JBの動きをすべてコピーした」と語っている。単なるダンス・ステップを真似ただけでなく、肉体を打楽器として機能させるパーカッシヴな動きやリズムを視覚化する方法論を学んだわけだ。もちろん、例の「アウッ!」というスタッカートの利いたシャウトや息をのむような鋭いブレスもJBから吸収したもの。子供時代に接したこれらすべてが、やがてマイケルならではの切れのいいグルーヴの下地を築いていくことになる。



