『ロングウォーク』
2作目も、地獄巡り系のロードムービーだ。舞台がとんでもなく地味なのも共通している。そして、とびきりスリリングな点も。
独裁政権下にある近未来のアメリカ。そこでは、少年たちをひたすら歩かせる大会が人気を博していた。志願してきた少年たちは軍の監視下で田舎道を歩き続け、規定のスピードを下回れば警告を受ける。そして4回警告されれば射殺され、最後の一人が残ったところで終了となる。勝利者は望むものが手に入る。
元はスティーヴン・キングの小説で、実は我が中高生時代の愛読書だった。当時、これは映画化は難しいと思っていた。映し出されるのは田舎道を歩く少年たちの姿のみ。小説として面白い要素であるそれぞれの戦略や背景、そして心理描写は文字だからこその表現で、画にならない。
それだけに、映像化の話を知った際は喜びより不安が大きかった。ハリウッド映画らしく、派手な仕掛けを加えて原作から大きく離れた作品になると思ったからだ。また、それしか映像化の道はないと信じていた。
が、その予測は良い意味で裏切られた。ほぼ原作の通りなのだ。映し出されるのは、ほぼ全編が「田舎道を歩く少年たち」のみ。にもかかわらず、とんでもなく面白い。原作に耽溺した際に感じた、切なさや淡さ、そしてシニカルな文体の向こうにある反体制の熱さ。その全てが、スクリーンに叩きつけられているのだ。
まず見事なのは、構成と編集だ。じっくり見せる時間、省略させる時間、簡単に経過のみ見せる時間。その取捨選択にメリハリが効いているため、同じような画が続くにもかかわらず飽きが来ない。
また、各キャラクターの描き分けも際立っている。歩き方、戦術のとり方、歩きながらの会話などを通してそれぞれの人物像が自然と入ってくるよう構成されており、原作にあった青春小説のリリカルな魅力がちゃんと画として刻まれているのだ。それだけに、終盤になって一人ずつ脱落していく哀しさがドラマチックに刺さることに。
といって、個々の死をことさらに劇的にしていないのがまた良い。あっさりとした中で一人ずつ消えていく。そのために、彼らに迫る宿命がより残酷に見えてくるのと同時に、淡い世界観が最後まで守られることになった。
『ロングウォーク』
監督:フランシス・ローレンス/原作:スティーヴン・キング/出演:クーパー・ホフマン、デヴィッド・ジョンソン、マーク・ハミル/2025年/アメリカ/108分/配給:クロックワークス/©︎2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved./6月26日(金)全国公開
