『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』

 最後も、残酷な環境下で生きる人々の物語だ。今度は少年ではなく高齢者。老人ホームを舞台に、地獄のようなサイコサスペンスが展開される。

 ステファンは優秀な判事だが裁判中に脳卒中で倒れ、人里離れた郊外にある高齢者用のケアハウスに入所させられる。同室になったのは、かつてラグビーのスター選手だった高齢者・トニー。そして、この施設には何か不穏な影が。それは、同じく入所者のデイヴが裏で陰湿なイジメを繰り返しながら、高齢者たちを精神的に支配していたのだ。その標的となったことで、ステファンはデイヴと対峙する決意をする。

『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』

 かつては職員として働いていたことから、施設や人間の動きを知り尽くすデイヴ。それに対し、記憶力も身体能力もままならないステファンは、なすがままにされるしかない。職員に助けを求めても、老人の妄言として扱われ、相手にすらされない。演出も構成も老人ホームという設定を活かしきっており、閉鎖空間と身体的な制限が逃げ場のないサスペンスを高めていく。

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 そして何より素晴らしいのは、演じる俳優陣だ。

 まずは、なんと言ってもデイヴ役。なにせジョン・リスゴーが演じているのだ。セラピー用のパペット人形を手に迫ってきて、あらゆる屈辱的な嫌がらせを仕掛けてくる。そのサイコパスぶりは「さすが」の一言。老いたことで壮年時以上に恐ろしさが加わり、現役時代の屈辱感を原動力に生き生きと狂気に勤しむ役柄にピッタリだった。

 これと対峙するステファンにはジェフリー・ラッシュ。どれだけ惨めなイジメを受けようとも決して気品を損なわない姿は実に凛々しく、ステファンをただの哀れな被害者ではないタフな人物として際立たせていた。そして、2大名優のぶつかり合いに目が行きそうなところに割って入るのが、トニー役のジョージ・ハナレ。過去の栄光と現代の惨めさとのギャップを切なく表現。ニュージーランドのベテランが、国際的な名声を得た二人を向こうに意地を見せた。

『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』
監督:ジェームズ・アッシュクロフト/出演:ジョン・リスゴー、ジェフリー・ラッシュ、ジョージ・ハナレ/2024年/ニュージーランド/104分/配給:エデン/©2024 Hyenas Rule Ltd/6月12日(金)より全国公開

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