なぜハイマースは“選ばれ続ける”のか

 ハイマースの射程は約100kmだが、その真価は対地・対艦どちらの標的にも対応できる点にある。さらにロケット砲とは名ばかりで、その実態は精密誘導が可能なミサイルそのもの。しかも、通常のミサイルに比べてはるかに小ぶりで安価である。

 自衛隊にもMLRS(多連装ロケット砲システム)が配備されており、そちらは1両で12連発発射できるのに対して、ハイマースはキャニスター(発射機)に6発しか装填できず、火力は小ぶりである。

 デカいもの、派手なもの好きなアメリカ人がMLRSからハイマースに乗り換えた理由は、その小ぶりな車体ゆえの軽さと機動性からである。実は、このハイマースは、米軍はじめ自衛隊や各国軍に採用されたC-130中型輸送機通称「ハーキュリーズ(ヘラクレス)」に車両ごとすっぽり収まってしまうのである。

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 この高機動性こそが、地球上ならどこでも6時間で駆けつけると豪語する米海兵隊はじめはじめ緊急展開部隊に主に配備されている理由である。

撮影=宮嶋茂樹

 豊臣秀吉の「中国大返し」の時代から、どんな優秀な兵士や武器でも、肝心な時に適切な場所に配備されんと宝の持ち腐れである。もちろん使われんに越したことないが、ちゃんとした時と場所にあらんと抑止力にもならん。だから、世界中の独立国の軍隊では戦闘訓練と同様、輸送訓練や兵站のための装備充実が真剣に続けられているのである。

 当然、陸海空自衛隊も毎年のように長距離機動輸送訓練を行っている。民間フェリーをチャーターし、JR貨物列車まで利用して。

 それら訓練は防災訓練にもなる。東日本大震災を例に上げるまでもなく、道路や鉄道、港湾、空港などの交通インフラが途絶えた状況下において、いかに迅速に被災地へ支援物資を届けられるかは極めて重要な課題である。民間ボランティアでは対応が困難な、インフラが途絶した過酷な環境下においても、人命救助や復旧・復興活動を継続できる忍耐力とノウハウは、これら日々の戦闘訓練や輸送訓練を通じてこそ培われるものである。

撮影=宮嶋茂樹

 残念ながら、射程の長すぎるハイマースが洋上の目標に命中したかどうかは肉眼では判断できなかった。だが、84mm無反動砲や迫撃砲、さらに小銃や機関銃の実弾射撃では、逃げ回る標的艇の周りで無数の水柱が立ち上がるのが目撃できた。それはまさに、日本海海戦もかくやというすさまじさであった。

 目標真上で破裂する曳火射撃では、目標周辺海域の広範囲に破片をばらまく。あの下に敵将兵がいたなら生き残るすべはないであろう。標的艇の中には直撃で燃料に引火して、炎上してしまったり、航行不能になったりしたのも見受けられた。