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ひとりの漫画家としての苦悩も名言に

やりたい事がやれない時期は
本当の夢が見つけられる絶好のチャンスです

『ちびまる子ちゃん』4巻「夏の色もみえない」

『ちびまる子ちゃん』の巻末に収録されていた自伝的要素の強い「ももこのほのぼの劇場」のファンという読者も多い。「夏の色もみえない」は高校受験を控えた中3の夏休みの様子を描いた作品。

 勉強をしなければと焦りながらも、結局は怠けてしまうわけなのだが、そんなもどかして辛い時期をさくらさんは「夢の育成期間」と呼ぶ。やりたいことがやれる時期は手頃な娯楽でごまかされがちだが、やりたいことがやれない時期はどうしても自分と向き合うことになる。これは子どもも大人も一緒なのかもしれない。

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©共同通信社

私は漫画家になりたい。
他の職業じゃなくて、漫画家になりたい。
……うん、きっとなれる。
これは気のせいなんかじゃない……

『ひとりずもう』下

 自伝エッセイをコミック化した『ひとりずもう』は、思春期のさくらさんが恋に悩んだり、親友のたまちゃんと将来について語り合ったり、夢だった漫画家に向けてひたむきに走りはじめる様子をリリカルに描いた作品。心配するお母さんに向かって言った「水の泡になってもいいっていう覚悟でやってるんだよっ」というセリフも印象深い。

「なにがしあわせってそりゃあ」

冗談じゃないよ
わたしの人生はわたしのものだよ
この子の人生とは別モノだからね
でも仲よくしていきたいね

『ちびまる子ちゃん』12巻

 まる子がコジコジと一緒に未来の漫画家になった自分に会いに行くエピソード「まる子 じぶんの未来を見にゆく の巻」より。アトリエで生まれたばかりの子どもの世話をしている未来のまる子――漫画家になったさくらさん自身が、コジコジに「子供のために人生ささげるってかんじ?」と聞かれて、きっぱりとこう答える。さくらさんの親子観がよく表れた言葉だ。

りっぱな家もいいけど
なにがしあわせってそりゃあ
みんな元気で楽しく暮らせるってこと
ねーえ

『ちびまる子ちゃん』1巻「うちはびんぼう」

 実は祖父が意地悪だったことを明かしていたさくらさんだったが、数々のエッセイなどを読めば、家族の仲は非常に良かったことがうかがい知れる。デビュー直後に発表された「うちはびんぼう」でも、「びんぼう」で「まぬけ」な家族の姿を描きつつ、てらいなく家族への愛情を表している。