60歳で新築マンションに買い替え、15年の住宅ローンをついに完済した小林幸太さん(仮名)。しかし「これで老後は安泰だ」とホッとした矢先、上階に引っ越してきた家族による昼夜問わずの強烈な騒音に悩まされるようになる……。

 マンションの居住者間トラブルで最も多い「生活音(騒音)」。一度発生すると解決の糸口が見いだせず、長期化しやすいのが特徴である。騒音主への注意喚起のチラシは読まれないことが多く、直接苦情を言えば関係が悪化し、警察に通報しても根本的な解決には至らない……。では、いったい、どうすればいいのか。

 ここでは、住宅ジャーナリスト・マンショントレンド評論家の日下部理絵氏による著書『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)の一部を抜粋。誰もが被害者にも加害者にもなり得る騒音問題のメカニズムと対処法を紹介する。

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せっかくの老後のためのマンションだったが

 他力本願ではあるが騒音宅の引っ越しや静かになることを願いつつも、警察に相談や裁判したほうがいいのか、荒立てずに防音室や防音仕様にリフォームしたほうがいいのか。

※写真はイメージ ©kimtoru/イメージマート

 思い切って自宅マンションを売却するか。いつか戻ってくることを前提に一旦賃貸に住み替えるか、一般的な賃貸が借りられない場合は、URやJKK東京なども視野に入れるのか。

 売却だけでなく他のマンションに買い替えるなら、リバースモーゲージ型住宅ローン(編集部注:自宅を担保に資金を借り入れ、契約者が亡くなった後に担保の自宅を売却して元金を一括返済するシニア向けのローン)を活用するか。その場合「リコース型(編集部注:売却額が借入残高を下回った場合、相続人が不足分の返済義務を負う)」か「ノンリコース型」か。どの金融機関で借りるのか。考えれば考えるほど、悩みが尽きない。

 正直なところ住宅ローンさえ完済すれば、老後は万全だと思っていた。毎月の返済がない分、趣味や旅行にもお金を回せるとも話していたし、住み慣れたわが家で夫婦穏やかに人生の最後を過ごせればとも思っていた。人生の終盤にこんな予想外のことが起こるとは……。

 幸い不動産価格が高騰しており、いま売れば買った時よりも高く売れるという。また60歳から借りた住宅ローンが完済済みというタイミングなのは、まだまだ私たち夫婦は運が良かったのかもしれないと、溜息をつく幸太さんだった。

長期化しやすい騒音トラブル

 騒音トラブルは、最新のマンション総合調査においても、居住者間のマナーをめぐるトラブルで「生活音38.0%」と最も多い。騒音トラブルは、一度発生すると解決の糸口が見いだせず長期化しやすい。最終的には、裁判や警察沙汰、引っ越しなども考えられる。

 一方で音は人によって感じ方が違い、誰がなんのために出している音なのかわかるとそれほどうるさく感じないこともある。たとえば、日頃から面識のある赤ちゃんや子供が出している音、事前に何日~何日までリフォームをしますと挨拶があるなど理由がわかっているようなケースだ。子供の顔がわかったり、リフォームなど明確な理由と時期がわかれば同じ音でも、想定内と思えたり心情的に致し方ないと思えたりする。ちょっとした配慮やコミュニケーションが重要なのだ。