ペットを飼うため、長年住んだ分譲マンションを売却し、賃貸へ住み替える決意をした信子さん(仮名)。しかし、不動産屋の担当者からは「65歳を超えると賃貸探しは困難を極めます」と無情な現実を突きつけられ、入居審査に落ち続ける日々が始まった。

 ここでは住宅ジャーナリスト・マンショントレンド評論家の日下部理絵氏による著書『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)の一部を抜粋。信子さんは入居審査に落ち続ける日々からどのように脱却したのか、超高齢社会において、シニアが家を借りる・売るリアルを紹介する。

◆◆◆

ADVERTISEMENT

UR賃貸に落ち着く

 そんな時、カルチャースクールの仲間から、だったらUR(独立行政法人都市再生機構)とか、JKK東京(東京都住宅供給公社)はどうかな、という話を聞く。

 早速、URのウェブサイトで物件を検索してみる。隣の駅ではあるものの、内装がとてもスタイリッシュで気になる物件を見つけた。聞くとUR賃貸は先着順で年齢による制限もないということで、迷わず申込書を書いた。

 すぐに入居可能の連絡が届いたのである。ようやくかと安堵した。

 はじめての賃貸マンション探しはワクワクする一方、敷金や礼金、仲介手数料といったお金がかかることに驚きっぱなしだった。ただ、入居可能になったUR賃貸は、月額家賃の2ヵ月分の敷金はかかるものの礼金なし、仲介手数料もかからないという。そのうえ一般的に2年に一度支払う更新料もなし。しかも保証人不要で、保証会社に支払う費用も軽減できていいことづくめだった。なかにはタワーマンションや無印良品とリノベーションに取り組んだおしゃれな部屋もあってとても驚いた。

 あとは引っ越しの準備だ。日頃から掃除をしているつもりだったが、物の多さに驚かされる。正明さんの幼少の頃の写真を見ては、思い出が蘇る。あの子がはじめて話した言葉は、「パパぁ」だったわね、なぜ私じゃないのかしらと拗ねたのを思い出し、笑いがこみ上げる。賢治さんとのデート写真もあった。たくさんの写真を見ながら、この人と結婚して良かったんだと心から思えた。