子どもたちのさまざまな質問に、各分野の専門家が「先生」として回答する「NHK夏休み子ども科学電話相談」。これまで「昆虫」「天文・宇宙」「心と体」「鳥」担当の4人の先生をインタビューしてきましたが、急遽モンゴル行きの飛行機に飛び乗る直前の「恐竜」の先生、北海道大学総合博物館准教授・小林快次先生にお話を伺うことができました。
世界中を飛び回って調査する小林先生、一体どんな人?
母が驚くくらい、化石にハマった子ども時代
―― 先生の子ども時代について教えてください。
小林 いまでは恐竜の化石がよく見つかることで知られる福井県の出身です。中学生の頃の理科クラブで先生に誘われて、アンモナイトの化石を発掘しに行ったのがきっかけで化石の発掘にハマっていました。
山の中に入っていって、崖のそばに落ちている汚い石ころをハンマーでパリンと割るのですが、そこから1億5000万年前のアンモナイトがでてくる。想像力がおよばないような長い時間眠っていたものを発掘して、よみがえらせる感覚に魅了されたんだと思います。
母が「15分以上机に座っていたことがないような子が」と驚くくらい、化石の発掘や、クリーニング(化石をきれいにする作業)に夢中でしたね。
「化石好き」がちょっと恥ずかしくなった高校時代
―― その情熱は、その後もずっと続いたのでしょうか。
小林 いえ、高校生になって、周囲が他のことに関心を持つようになると同時に「化石が大好きというのもちょっと恥ずかしい」という気持ちが出てきて。
それに、高校生にもなると、将来のことをぼんやりと考え始めるじゃないですか。当時は、ただ化石を集めるのが好きなだけだったので、それを仕事にするという発想はなかったんですよね。
―― どのような道に進みたいと考えていたのでしょう。
小林 化学の道に行きたいなというのは、ボーッと思ってたんです。数学や理科といった、答えに到達する方法が一つじゃない科目が好きで。仮説を立てて、それを検証していくのがすごく好きでした。逆に、英語や歴史のような暗記科目は好きじゃなかったです。
―― では、当時は恐竜の名前はどうやって覚えていたのですか?
小林 覚えるのが大の苦手だったんですよ。だから、当時好きだったのも、恐竜ではなく、あくまで化石。恐竜にあまり興味がなかったので、なおさら「化石を掘るのを仕事に」と考えづらかったのでしょうね。
「恐竜少年の小林くん」と期待されていたが……
小林「一旦化石は横に置いておいて、将来のことを考えようかな」と思っていたのですが、高校に入ってからも中学生のときから知っていた博物館の方に「今度、恐竜の発掘があるんだけど来ないか」と誘われて、また化石に引き戻されるきっかけになっちゃって。発掘に来ている横浜国立大学の方々とも顔見知りになり、「恐竜少年の小林くん」として期待もしてくださっていたようで、3年生になると「うちに来たら?」と誘っていただきました。
そうやって横浜国大に入学したのですが、なんせ流されるままに来た道なので、「これは本意ではない」という気持ちが抜けませんでした。そのうち、米国留学のお話をいただいたのですが、これも優柔不断に「行きます」と言ってしまい、テキサス州に1年留学することになりました。この1年が、とてもつらかった。