鳥担当の川上先生とは「牽制しつつ」
―― 取材申し込みさせていただいた際には、アラスカにいらっしゃいましたね。今、どのような研究をされているのですか。
小林 僕の研究では、アラスカのような北極圏でも恐竜は生き延びられたことがわかっています。寒くて、暗くて、食べ物がない、そんな極限状況にも適応できた恐竜の、生命体としての優秀さを研究しているのがひとつあります。あとは、恐竜がどうやって鳥に進化していったか。
――「NHK夏休み子ども科学電話相談」で「鳥」担当の川上和人先生と共演された際の、「鳥は恐竜です」「いや、恐竜は鳥」の掛け合いは、リスナーの間で名物になりました。
小林 そうですね(笑)。ようは、今生きている動物を見ないと恐竜のことがわからないので、かなり鳥の研究が参考になるんです。なので、川上先生が持っている知識や経験は勉強になるし、先生とのお話は楽しいです。おたがいに牽制しつつ、刺激し合いながら議論しています。
放送で漏らしそうになった「むかわ竜」の今後
――「NHK夏休み子ども科学電話相談」で質問者に「新情報はまだ?」と急かされた、北海道むかわ町の「むかわ竜」が先日公開されましたね。
小林 放送中にあやうく未発表情報を漏らしそうになってしまいましたが(笑)、近いうちに「むかわ竜」の全貌を皆さんに伝えたいなと思っています。
ただ、私が今回「むかわ竜」を研究しても、それで終わりではないんです。今の子どもたちが学生や大人になる頃には、また新しい研究手法や研究分野が生まれて、新たなむかわ竜の研究が生まれると思っています。
―― 恐竜研究での新発見の余地は、これからもあるのでしょうか。
小林 まだまだありますよ。恐竜のことはむしろ「ほとんど分かっていない」というのが実態なんです。というのも、哺乳類や鳥類は6600万年前から地球上に存在しているんですけれども、今現在、鳥類はおよそ1万種類、哺乳類が5000種類いると言われています。対して、恐竜は1億7000万年間地球上に存在していたんだけれども、まだ1000種類しか見つかっていません。
本来なら何十万種類の恐竜がいたと思うんですけれども、そう考えるとまだ99パーセント以上の恐竜が見つかっていない。だから、これから恐竜研究者を目指す子どもたちが新しい恐竜を発見することは当たり前のように可能です。
恐竜学者になるにはどうすればいい?
―― 恐竜学者になるには、どうすればいいのでしょう。
小林 恐竜は総合科学なので、いろいろな分野のスキルが必要です。理科や算数は当然ですが、論文を書くので国語なんかも必要です。海外で調査をするにあたっては、現地の社会状況を知っているとコミュニケーションが取りやすくなるので、社会も必須ですよね。音楽だってコミュニケーションに役立ちます。すべての勉強が恐竜につながってくるので、がんばって無駄なことは一つもありません。
他には、友だちをたくさんつくること。これは、恐竜研究にあたっては、一緒に研究する研究仲間をつくることが大事だからです。そして、恐竜を好きでい続けることが、恐竜学者に近づく鍵だと思います。
―― あらためて子どもたち、そして大人に伝えたいメッセージって、どんなものでしょう。
小林 挫折は成長の肥やしなんです。壁を乗り越えれば次の大きい成長につながるし、自分を知るいい機会にもなる。僕も、米国で悩んだ経験があって、今の自分がいます。やりたいことはやればいいし、失敗したって全然恥ずかしいことでもない。いろいろなチャレンジをしていってほしいなと思います。