昼間はエキストラ、夜は友人がやっているスナック
――エキストラはセリフが無いわけですよね。
五頭 エキストラというのは、メインの監督さんが動きをつけるわけではなく、セカンド、サードの助監督さんから指示が来るんですよ。いくら目立とうとしても無理で、いわばモブ的な存在です。
ただ、歩き方1つとっても、駅へ急ぐ人もいれば犬をゆっくり連れて行く人もいる。年代やその人の背景によって歩き方は全然違う。脳梗塞になって歩いている人はどんな歩き方をしているか、手はどうなっているか、杖はどうついているか。そういったことをさまざまな人を見ながら随分研究しましたね。
――エキストラとなると、やはりギャラは。
五頭 1日5000円とか、3000円の仕事もありました。エキストラは数をこなさないとやっていけませんね。だから、並行してバイトもやっていました。昼間はエキストラ、夜は友人がやっているスナックを手伝って、週3日ぐらいはスナックにいましたね。
スナックの仕事は会話ができるから楽しかったですよ。お客さんの訛りをちょっと聞いただけで「茨城の方ですか」と言い当てられるんです。「なんでわかるんだ?」と驚かれて、そこから会話がどんどん発展していって。
旅公演でいろんな地方を回ったことで、各地の訛りがわかるようになっていたんですよ。それはスナックのバイトで活きましたね。
「何かあったら五頭を呼ぼう」というつながり
――事務所に入ってから注目を集めるようになったそうですね。
五頭 事務所に入ったのは、60歳の時です。あるエキストラ事務所がタレントセクションのプロダクションを作るということで、土下座するような気持ちで入れてもらいました。今の事務所は若い子を欲しがりますから、60歳の男を雇うのは、なかなか難しいことだったんじゃないですかね。
でも運が良かったことに、事務所に入ってすぐに三木聡監督の映画『図鑑に載ってない虫』のオーディションがあって、それに受かった。ホームレスの役で、そこで気に入っていただいて立て続けに4本ぐらい同じキャラクターで出させていただきました。
そこから藤井道人監督の『最後まで行く』、白石和彌監督の『凶悪』、大根仁監督の『地面師たち』にも出させていただくようになって。何本か御一緒させていただいて、「何かあったら五頭を呼ぼう」というつながりができていったんですね。
撮影=杉山秀樹/文藝春秋
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