Netflix『地面師たち』でホームレスの老人を演じ、鮮烈な印象を残した俳優・五頭岳夫(78)。

 同作でブレイクを果たし、出演シーンがミームとして使われ、Tシャツにまでなってしまった五頭氏に、俳優として活動するうえで抱いていたコンプレックス、大病がきっかけで背負うことになった数百万円の借金、『地面師たち』出演の経緯などについて、話を聞いた。(全5回の4回目/5回目に続く

五頭岳夫さん ©杉山秀樹/文藝春秋

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「お前は絶対、ある年代になって老け顔になってきたら化けるかもな」

――50年以上も俳優を続けられてきて、容姿などにコンプレックスを抱くことは。

五頭岳夫さん(以下、五頭) ありましたよ。芸能界を目指した頃、テレビや映画で活躍しているのは、橋幸夫さん、舟木一夫さん、西郷輝彦さんの御三家、それと三田明さんといった、可愛らしいルックスの方々が主流でしたから。さすがに自分にはムリだとわかっていて、舞台に進んだのも正直なところで(笑)。

 貧相な顔立ちと言いますか、私みたいな容姿の役者が映像に出ると役柄がある程度決まってしまう。そこへの葛藤はありました。

 ただ、小津安二郎監督の映画に出てくる劇団出身の人たち、例えば『晩春』に出ていた三島雅夫さん、『東京物語』や『秋刀魚の味』の中村伸郎さんといった方々は、ルックスはあまり関係ない。脇でいぶし銀のように光っているんです。

「だったら自分にもそういう道があるんじゃないか」と思えたことが、俳優を続けていけた原動力のひとつになっていましたね。

甥を抱く20代の頃の五頭岳夫さん(本人提供)

――周囲から容姿についてなにか言われていましたか。

五頭 学芸会でお年寄りの役ばかりやっていたように、子供なのに大人びたところがあったんでしょうね。先輩から「お前は絶対、ある年代になって老け顔になってきたら化けるかもな」と言われたことがあります。それは先輩以外にも、よく言われていました。

 懸命に働いていたきょうだいたちの背中を見て育ったから、「駄々をこねていられない」「大人にならなければいけない」みたいな気概が、おのずと顔や振る舞いに出ていたんでしょう。