恩田陸さんに導かれ「読書家」に

――三宅さんご自身は、家族観などについて、子どもの頃に人生で初めて読んだ漫画『ママレード・ボーイ』(吉住渉著)から影響を受けた、とおっしゃっていますね。

三宅 当時の漫画やアニメは、今振り返っても先進的というか、家族の多様なあり方とか平等な男女関係とかが、しっかり描かれていたと感じます。それが「読書」の原体験だったのは、私にとって大きかったです。

 そうしたこともあって、私も今の時代の母娘関係というものには興味を持っていて、『娘が母を殺すには?』という本も書きました。瀬尾さんや町田さんも、今回の作品だけでなく、ずっとそのあたりを1つのテーマとして、追いかけていらっしゃいます。なので、著作が出るたびに、私も読者の1人として共感したり、深く考えさせられたりしながら読んでいます。

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――お仕事のために読むケースも多いとは思いますが、プライベートでは、どんな基準で本を選ばれるのですか?

三宅 特に問題意識を持って選ぶとかいうのはほとんどなくて、単純に「今読みたい本」「面白そうな1冊」ですね。仕事で読む場合にも、結局自分が興味のある今書きたいテーマに沿ったものになりますから、スタンスはそんなに変わりません。

 ジャンルも様々です。私は、中学時代に恩田陸さんの著作に出会って、大きな影響を受けました。恩田さんは小説を書かれるだけでなく、エッセイスト、評論家として、たくさんの本を紹介してくださいました。それをガイドのようにしていろんな本を読むようになり、その面白さ、奥深さを知ったことが、今の仕事につながっていったのです。

 ちなみに、今年の本屋大賞に作品がノミネートされた佐藤正午さん、湊かなえさん、伊坂幸太郎さん、瀬尾さんも、そうやって当時から読み続けてきた作家さんです。そういう方たちが、ベテランと呼ばれる域になって書かれる作品を読めるというのも、私にとっては大きな喜びです。

撮影・奥西義和

AIにはない答えをくれる本の魅力

――書評などの形で本に関する発信をされていますが、あらためてそこに込めた思いを聞かせてください。

三宅 小説などの文芸作品は、多くの方にとって楽しむために読むもの。その水先案内ができれば、と思っています。

 同時に、さきほども言いましたけど、人といてもしんどいとか、自分のことをわかってもらえそうもないとかいうことが、誰にでもあると思うのです。でも、本の中ならば、「これは自分のことを言っているんだ」という言葉に出会えることがあるんですね。

 例えば、AIは褒めてくれたり、答えを出したりはしてくれますけど、一緒に苦しんではくれない。でも、本の中には、苦しみが描かれると同時に、思ってもみなかった解決策が秘められていたりもするのです。本と対話することで、まったく見えていなかったものが目に入るかもしれません。それが読書のいいところ、醍醐味だと、私は思っています。

――なかなか読書の時間がつくれない、という人にひとこと。

三宅 「隙間時間」に、気軽にページを開けるのも、本ならではではないでしょうか。同じエンタメでも、映画は映画館まで足を運ぶ必要がありますけど、小説なら人を待つ間でも電車の座席でも、1人の時間に浸ることができます。

 まずはカバンに1冊の本を忍ばせる。身近なところに小説を置く。そんな習慣をつけるところから始めてはいかがでしょうか。本屋大賞のような賞を取ったり、そこにノミネートされたりした作品から読み始めるのも、おすすめです。

構成:南山武志

撮影・奥西義和

三宅香帆(みやけ・かほ)

文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。1994年高知県生まれ。京都大学人間・環境学研究科博士後期課程中退。リクルート社を経て独立。主に文芸評論、社会批評などの分野で幅広く活動。著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』『「好き」を言語化する技術』等多数。

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