「政治的主張の如何ではなく、彼女の『切り抜かれやすい』演説の『言葉遣い』に注目してみたい。なぜなら、いま影響を与えているショート動画とは、政治的主張への共感よりも、『切り抜いて再生回数が増えるかどうか』にのみ焦点を当てて切り抜かれているからである」 

 先の衆院選で、歴史的大勝を遂げた高市早苗首相。その“強さの秘密”について、文芸評論家の三宅香帆氏が分析し、文藝春秋4月号に「高市総理の秘密は『文体』にあり」を寄稿した。

街頭演説する高市首相 ©EPA=時事

 三宅氏が着目したのが、政治家たちがYouTubeなどネット動画で語る「言葉」だ。近年の政治家の動画トレンドについて、次のように説明する。

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「私たちがいま目にする短い動画は、『切り抜き』と呼ばれるものがとても多い。切り抜きとは、長い動画のなかから面白いシーンや重要なシーンだけを抽出し、短い動画に再編集したもの。(略)YouTube動画は再生されるだけお金が稼げる。広告収入は再生数に応じて増える」

「それゆえに、とにかく稼ぐために、多く再生されそうな切り抜き動画を大量投稿するようになる。――この仕組みを利用して議席を伸ばしたのが、たとえば2025年参院選で話題を集めた参政党だった。(略)田中角栄は握った手の数しか票数は得られないと述べた。が、ある意味、動画時代とは、『切り抜き』によって握手の回数を無限に伸ばせる時代でもある」

 そんな動画トレンドの中、今回の衆院選で大量再生されたのが、高市首相の「切り抜き」動画だった。日本経済新聞の調査によれば、1800本近い動画で言及され、ポジティブな好意的動画が多いという。