「大変な苦労のし通しでした!」

 いよいよ台本も出来て、他の役者さんも決まったので稽古が始まりました。そうしたら突然、あの人、役者さんみんなに向かって、「台本の台詞を捨てろ!」って(笑)。

 皆さん、台詞を頭に入れてはるでしょう? だから顔色が真っ青になってました。

若かりし日の中村玉緒さん(1961年撮影) ©文藝春秋

 勝としては書かれた台詞がイキイキ聞こえない、それが不満だったんでしょうね。彼が口立てで語った台詞をカセットに録って、それを私や演者が頭に入れることになったんです。私は台詞をきっちり頭に入れておきたいタイプなんで大変な苦労のし通しでした!

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 本番を迎えたら、また稽古と違う演出をやりましたよ。芝居の結末、普通より早くパーッと緞帳を下ろすなんてことも。お客さんはびっくり仰天(笑)。

 とにかく生涯、大向うを驚かせて楽しませたいという人でした。

 翌6月は1カ月の地方公演に回りましたけど、私はいつ夫が倒れても看病できるように着物とか準備して行きました。それでもね、勝はお酒も口にするし、プカプカ煙草を吹かしよるんですよ! 私らから「やめなさい」と注意されても、どこ吹く風。「だめなんだよなァ」とボヤくだけ(笑)。

 これも周りの目を意識した彼流のサービスなんですよ。「破天荒な勝新太郎」を私生活でも、死ぬまで貫いて演出してたんやと思います。(取材構成・岸川真)

※この続きでは、勝新太郎の死後のエピソードを中村玉緒さんが語っています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」でご覧いただけます(中村玉緒「勝新太郎 『破天荒』はサービス」)。

文藝春秋

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勝新太郎 「破天荒」はサービス
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