上野の不忍池のほとりで初デート→キス→プロポーズ
えっ? 初デート? 二人でどこかに出かけるのがデートだよね。兄弟子と妹弟子という意味では、師匠と3人で営業に行った帰りに二人になったことはあるけど……男女を意識して歩いたという意味では、うん、ハッキリ覚えてる。あの日は雨が降ってたねぇ。上野の不忍池のほとりで、なんだろうなぁ。今思うとね……いろんな話をしてねぇ。それで雨の中、キスをしたの。さぁ、今日こそはキスするぞなんて、そんなことはない。なんか自然の流れだよね。
それでプロポーズした。もちろん、パー子はいつでもオッケーというサインをずっと出していたから、あとは僕の気持ち次第、踏ん切り1つだったんだけど、その一歩が踏み出せなかったんですね。
でも初キスをした頃から、なんとなくね。僕を見てパー子のお母さんも歯痒くなったんでしょ。パー子の家の近くに僕の部屋を勝手に借りちゃって、そのうちにパー子のお姉さんが布団を運んできたんだから。ここまでされたら、そりゃあ、もう。
「おかみさん、話があります。僕、結婚したいんです」
パー子と結婚することを最初に告げたのはおかみさん。根岸の家に行ったら、おかみさんが3階の部屋にお茶を持っていくところで、そのタイミングで「おかみさん、話があります。僕、結婚したいんです」と言うと、振り向いて「結婚って誰と?」と聞くから、「あのぅ、パー子です」と言ったら、今でも覚えている、「えええ~っ、うそぉ」って、おかみさんがびっくりしてお茶碗が飛んだのよ。僕はそれがショックでね。売れっ子のパー子がお前みたいな男を相手にするわけないでしょって、そういう反応に聞こえたんですよ。まぁ、それも無理はないんだけどね。
それでおかみさんが、「お父さん、お父さん、ペーがパー子と結婚するんだって」と言ったら、師匠は一瞬、ギョッとした顔をしたけど、「そう。よかったね」と言ってくれた。おかみさんがあんまり「うそっ、本当に? 信じられない」と繰り返すから、そう言うしかなかったんじゃない?
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