みなさん、こんにちは。スポーツライターの二宮寿朗です。
文春オンライン編集部から「森保一監督率いるサッカー日本代表の初陣(コスタリカ戦=11日、パナソニックスタジアム吹田)を観戦するうえで、事前に知っておくべき10個のポイント」をリクエストされました。「ロシアW杯を見て興味を持ったのに、メンバーに知っている名前がない!と動揺しているファンにも引き続き代表サッカーに興味を持ってもらうための解説を、池上彰さんのように分かりやすくお願いしたい」と。
10個も無理です。と応じたら、「なら7個、いや5個でいいです」。
池上さん、自信ないです。と応じたら「あくまでイメージで」。
ということで、池上さんになったつもりで「5つの質問」に答えていきたいと思います!
質問1.「どうしてロシアW杯メンバーからこんなに入れ替わるんですか? ロシアで活躍した乾貴士選手や大迫勇也選手たちを見たかったのですが……」
解説
今回、ロシアW杯のメンバー23人から入ったのはGK東口順昭(ガンバ大阪)、DF槙野智章(浦和レッズ)、遠藤航(浦和レッズ→シントトロイデン)、植田直通(鹿島アントラーズ→セルクル・ブルージュ)、MF山口蛍(セレッソ大阪)、大島僚太(川崎フロンターレ)の6選手だけ。山口、大島両選手はケガで辞退したため、結局4人になりました。「活きのいい若手」が中心に呼ばれました。メンバーの平均年齢もロシアW杯の28歳台から3歳も若返っています。
過去におけるW杯後の初陣を見てみるとアルベルト・ザッケローニ監督は10年10月のアルゼンチン戦で22人中12人を南アフリカW杯メンバーから選びました。4年後の14年9月ウルグアイ戦、ハビエル・アギーレ監督はブラジルW杯メンバーから22人中11人を選んでいます。ですから今回の森保一監督の選考は、ちょっと異例に映るかもしれません。
大きな理由に「選手の情報を持っているかどうか」があります。ザッケローニ、アギーレ両氏は監督に就任したばかりで日本人選手の情報が少なく、まずはW杯メンバーを自分の手元に置いて力量を把握したかったというのがあると思います。そして手堅い選考になるもう1つの理由は、翌年1月にアジア王者を決めるアジアカップが控えているからです。結果の求められる大会が半年後に待っているわけです。
森保監督はロシアW杯の日本代表コーチとして帯同していましたから、メンバーのことは把握しています。
そして欧州シーズンが始まったばかりで、所属クラブでレギュラー争いに専念してほしいという思いもあるはずです。乾選手、大迫選手、原口元気選手、武藤嘉紀選手たちは今季から新しいクラブに身を置いています。なので今回は国内のJリーグで活躍している選手プラス、海外で次の日本代表に入ってきそうな若い選手をピックアップしたのではないでしょうか。
質問2.「長谷部誠選手が代表を引退して次のキャプテンに注目していました。なぜ国内組の青山敏弘選手が指名されたのでしょうか?」
解説
サンフレッチェ広島のキャプテン、青山選手が代表でもキャプテンを務める予感は私のなかにありました。代表経験豊富な吉田麻也選手や長友佑都選手たちが招集されていないので、「青山キャプテン」はあくまで暫定的だとは思います。しかし私の勝手な予想ですが、「青山キャプテン」は継続していくんじゃないかとも考えています。森保監督はサンフレッチェ広島監督時代に3度、Jリーグを制しました。青山選手がチームの中心を担い、14年シーズンからはキャプテンとしてチームを束ねています。責任感が非常に強く、リーダーシップを持っています。森保監督としては自分のチームづくり、戦術を熟知しており、彼の姿勢を通じて「自分のやり方」を浸透させていくという狙いがあるように思います。
ただ「青山キャプテン」はほかにも理由があるような気がしてなりません。チームの立ち上げを国内組から始めたと言えば、06年ドイツW杯後に就任したあのイビチャ・オシム監督です。彼は当時ジュビロ磐田に所属した川口能活選手をキャプテンに指名しました。ある程度チームをつくっておいてからセルティックに所属していた中村俊輔選手ら海外組を呼び入れる方法を採用しました。
森保監督はひょっとするとザッケローニ監督やアギーレ監督、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のように、試合があるたびに主力と考える海外組を全員呼び戻す手法を考えていないのかもしれません。さすがに今は国内組で代表キャンプを行なうのも難しくなっており、オシム監督のような手法は取れないと思いますが、それでも今回のように国内組がベースとなる試合もあるよというメッセージを感じるのです。幅広い人選で欧州の主力を呼ばない可能性があるのなら、国内組からキャプテンを選んだほうがいい。その観点からの青山キャプテンではないかという見方を私はしています。