ナカモトが姿を消すと、バック氏が現れる

 技術面での指摘もある。ナカモトは「ハッシュ・キャッシュ」という統計的パズル解決システムをビットコインのマイニングに利用したが、このシステムを発明したのはバック氏だった。

 さらにバック氏は1997年、仲間とのメールの中で、政府の介入を回避できる電子現金システムの構築を提案している。その提案は、プライバシー保護などの5つの要素を備えていたが、この5つの要素はナカモトが構築したビットコインの中核をなしていた。

 最も決定的に見えるのは、バック氏が再登場した時期である。バック氏とナカモトが登場したり、姿を消したりするタイミングは、まるで示し合わせたかのようだ。

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 ビットコインが登場した後、バック氏はサイファーパンクたちのフォーラムから姿を消した。だが、反対に、ナカモトは約2年半にわたってビットコインの改良を続けた。そして、ナカモトが2011年に姿を消してから6週間後、バック氏は同年6月に初めてビットコインについて投稿しているのだ。つまり、ナカモトが登場するとバック氏は姿を消し、ナカモトが姿を消すとバック氏が再登場するという状況が生じていたというのだ。

 その後、バック氏は、2013年、ウィキペディアに対して「ビットコイン」のページに統合されてしまっていた「サトシ・ナカモト」単独のページを復元するよう強く要求。さらに、ビットコイン・ネットワークをより使いやすく、高速に、そしてプライバシー性の高いものにするためのツールを開発すべく「Blockstream」というスタートアップ企業を設立し、ビットコイン・コミュニティにおける中心人物へと上り詰めていったという。

「(バック氏の)一連の動きは、ナカモト本人が実名で表舞台に再登場し、自ら生み出したビットコインの主導権を取り戻そうとする行動に思われた」とキャリルー氏は指摘している。

文体分析から明らかにされた“同一人物の証拠”

 このように、キャリルー氏は、バック氏がナカモトだとする多数の状況証拠を提示しているが、何より興味深いのは同氏が文体に注目したことだ。同氏は、1990年代から2000年代にかけてサイファーパンクたちが集まっていた3つのメーリングリストのアーカイブを収集して文体分析を行い、ナカモトとバック氏の間に共通点があることを見つけた。それは文章の「書き方の癖」だ。

 例えば、ナカモトは文と文の間にスペースを2つ入れるという、今では廃れてしまった、まるで50歳以上の人々がしそうな書き方をしていた。だが、バック氏も同様の書き方をしており、同氏は現在55歳だという。