他にも、ナカモトについては、イギリス式スペルを使用していること、「it’s」と「its」を混同することがあること、文末に「also」を付けることがあること、「bugfix」と1語で書くこと、「half way」「down side」と2語で書くこと、「double-spending」と本来は不要なハイフン付きで書くこと、「file sharing」「noun based」と本来は必要なハイフンなしで書くこと、「e-mail」と「email」、「e-cash」と「electronic cash」のように表記揺れしたり、「cheque」と「check」といった英米のスペルを混在させているなどの特徴が見られたという。
そして、これらの特徴に一致したのは、数百人いるメーリングリスト参加者の中では、バック氏だけだったというのだ。
さらにナカモトは「proof-of-work」「partial pre-image(部分的な原像)」「burning the money(お金を燃やす)」といった特有のフレーズを用いている。これらのフレーズを誰が使っているか調査すると、バック氏に辿り着いたという。
確かに、「書き方の癖」は、簡単には変えられるものではないかもしれない。その意味では、キャリルー氏の分析は説得力がある。
ジャーナリストが本人を直撃すると…
同氏は、調査結果を携えて、バック氏に面会し、ナカモトなのか?と直撃したが、バック氏はナカモトであることを否定し、同氏が提示した証拠を偶然の一致とみなしたという。
しかし、ボディーは嘘をつけなかったようだ。キャリルー氏は、それらの証拠を突きつけられたバック氏が顔を赤らめたり、落ち着きなく身じろぎをしたりするのを見逃さなかった。
また、インタビューテープを聞き返したキャリルー氏は、バック氏がナカモトであると自認するかのような発言をしたことにも気づく。
キャルリー氏が「ナカモトは『私は言葉よりもコードで表現する方が得意だ』と述べていますよね」と言うと、バック氏は「いや、それにしても、ずいぶん喋ったものですよ。言葉の扱いに長けているなんて言うつもりはありませんが、実際、あのメーリングリスト上では随分と饒舌に書き込んでいましたからね」と、まるで自分がそう書いたかのような発言をしていたのだ。バック氏は思わず口を滑らせてしまったのか?
もっとも、バック氏は自身の発言について「技術畑の人間は文章よりもコードでアイデアを表現する方が心地よく感じるものだ、という一般的な観察に言及したものだ」と弁明している。だが、キャルリー氏はこのシーンをバック氏が仮面を脱いでナカモトになった瞬間だと捉えている。
「バック氏=ナカモト説」に異論を唱える人々もいる。ニューヨーク・タイムズのベストセラーとなった著書を上梓しているジャーナリストのウィリアム・D・コーハン氏と私立探偵のタイラー・マロニー氏だ。
4月22日、キャリルー氏が“バック氏=ナカモト説”を発表したのとほぼ同じタイミングで『サトシを探して』というドキュメンタリー映画がオンラインで公開された。この映画は、ナカモトの正体を暴くべく、4年にわたって行われた両氏の調査活動を追っている。(つづく)