担当者が電話したところ、ビルマ人契約社員はレストランで食事中だった。15分後に帰宅して「パソコンで確認する」という返事が届いた。自宅で投稿を精査し、削除対象かどうか判断するという。それからさらに2時間近くが過ぎたころ、上位担当者は「契約社員が仕事用のノートパソコンを持っていない」と報告してきた。そして自分自身も外出中なので「帰宅してから対応する」と言った。私は責任を感じると同時に無力感に打ちのめされた。

「いつになったら対応できます? 一刻を争う事態です」と私は催促した。

投稿は引き金、問われたのは運営体制

 これに対して返信はなかった。私はカリフォルニア本社の別の誰かに削除してもらう手はずを整えたが、そのためには問題の投稿のリンクが必要だ。ダブリンの上位担当者からようやくリンクが届いて、三つの投稿が削除された。削除からわずか4分後、現地の時刻は午前4時半だというのに、ミャンマーでのFacebook遮断は解除された。

ADVERTISEMENT

 人の命がかかっている状況で、Facebookがこんな仕組みに頼っていていいわけがない。投稿が引き金になって街で暴動が起きているというのに、アイルランドのどこかで食事に出かけていて、会社支給のノートパソコンがどこにあるかさえわからない契約社員に判断を一任するなんて、許されていいわけがない。

 この一件と過去数カ月の経験を踏まえ、私は経営陣とコンテンツ運用チームに対し、ミャンマー対応を根本から見直すべきだと提案した。何が失敗だったのかを解明し、是正しなくてはならない。しかし、この提案は歓迎されなかった。

 コンテンツ運用チームの責任者は、メールでこう反論した――コンテンツ運用チームは〈やるべき対応を正確にこなしました。問題の投稿は表面上、規定に違反していませんでした……三つの投稿はいずれも、事実をそのまま伝え、政治的行動を呼びかけるものであり、ヘイトスピーチではありませんでした。〉

 そういう問題ではないと私は反論した。

失敗を認めなかった経営陣

 Facebookの規定には「現実に身体的危害が及ぶ明白な危険、または公共の安全に対する直接的な脅威があると判断される場合には、コンテンツを削除する」と明確に書かれている。暴動のような、現実世界での暴力を引き起こしている以上、規定違反であることは明らかだ。

 彼らは「ミャンマーで起きていることだから」と軽視してすませられると思っているようだが、独裁者の選挙と同じで、世界のどこかで一度許してしまえば、積極的に防ぐ手立てを講じないかぎり、同じパターンが別のどこかでかならず繰り返される。しかし、私の主張は無視された。コンテンツ政策責任者は追加の研修を行うことさえ拒否し、今回の対応に不備はなかったと言い張った。それどころか、「今回の件でコンテンツ運用チームは正しい対応をしたという簡単なメモを送り、チームメンバーを安心させるべきだ」とさえ言い出した。そして経営陣に対して次のように報告した。

「コンテンツ運用チームの責任について明確にしておきたいと考えます……チームはなすべきことを正確に遂行しました。問題のコンテンツは一見してポリシー違反ではありませんでした」