若かりし駒木爽氏が出向先で出会ったのは、愛嬌あふれる年下の初期研修医だった。傷心の彼女を「傾聴と共感」で射止め、熱烈なプロポーズの末にゴールイン。遠距離と激務に阻まれながらも、LINEで夕食の写真を送り合い、信頼を育んでいると信じていた男に突如突きつけられた現実とは?

 新刊『精神科医おどおど日記——閉鎖病棟24時、本日当直、あらゆる精神疾患寝ずに診ます』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。なお、プライバシー保護のため登場人物の名前は仮名、一部のエピソードに脚色を加えている。(全2回の1回目/続きを読む

写真はイメージ ©getty

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「40すぎで独り身の男には何かしら欠落がある」

 つい先日、SNSでそんな投稿を目にした。この多様性のご時世に何をバカなと思う反面、40歳をすぎて独り身の私にとって“心の澱”が浮き上がる言葉でもある。

ある夏の出会い

 30代になった私はK病院から、隣県の大きな総合病院に出向した。K病院で経験しづらい症例を学ぶのが目的だった。

 湿気のない爽やかな風が観光客を呼び寄せる8月、その病院にも新しい研修医たちが配属された。私が経験したように、初期研修医たちがローテーションのひとつとしてやってきたのだ。

 その一人、佐々木美晴さんはショートボブに黒縁メガネ、見るからに真面目さを感じさせるが、笑うとなんともいえぬ愛嬌があり、高齢者の人気を集めそうな予感がした。私は、そんな彼女の教育担当を命じられることになった。

 たいていの研修医は精神科を“オフ期間”とみなす。私だって初期研修医のころにはそう思っていたのだから仕方ない。ただ、中にはやる気がないことを露骨に態度に出す輩もおり、そうなるとこちらとしても指導する気が失せる。

 しかし、「神経内科」志望だという彼女は精神疾患の勉強に意欲的で、率先して質問を投げかけてきた。私のレクチャーを、つねに熱心にノートに記し、私のつまらないジョークにも笑顔で反応してくれる。私はだんだんと彼女に惹かれていった。