結婚からわずか半年、徐々に家を空けるようになった妻。現実から目を逸らしていた夫に、出張先で冷酷なLINEが届く。告げられたのは、あまりに切ない「裏切り」の真相だった。愛する妻と別れた医師のその後とは――。

 精神科医・駒木爽氏の新刊『精神科医おどおど日記——閉鎖病棟24時、本日当直、あらゆる精神疾患寝ずに診ます』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。なお、プライバシー保護のため登場人物の名前は仮名、一部のエピソードに脚色を加えている。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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どんどん疎遠になる妻

 入籍から半年をすぎたころ、彼女は月に一度の帰宅を渋るようになった。

「ICUに入っている患者が多くて」

「今週中に学会の資料を完成させないといけなくて」

 理由はいろいろだったが、鈍感な私もそれが単なる仕事の忙しさによるものではないことを本能的に察し始めていた。

 喉元まで出かかった「帰ってきたくないの?」という言葉を吞み込む。

「そうか。ICUは気が抜けないもんな。体、壊さないようにね」

 彼女との心の距離を、私はあえてふんわりとした優しさで包み込もうとした。

 直接的な問いを投げれば、この脆い関係が音を立てて壊れてしまうのが怖かった。

 最初は毎日のようにやりとりしていたLINEの夕食メニュー報告も1日置き、2日置きになっていった。それでも数日置きに送られてくる、彼女からの夕食の写真に、まだ絆がつながっているのだとすがりついた。

「彼女は忙しいんだ。神経内科の専門医への道は険しいから」

 自分にそう言い聞かせ、私は現実から目を逸らしていた。