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「ごめんね」
「メッセージ見たよ。どういうこと?」
「今の病院でまだしばらく研修が続きそうなの。ごめんね」
「いや、指定医まで取れたら自由に引っ越せるよ。今、離婚までする必要なんてないから」
「今は自分のことで精一杯で、先のことを考えるのがすごく重く感じちゃうの。だから、一人になって研修に集中したいっていうか⋯⋯」
何をどう言ってみても、彼女ははぐらかすような返事を繰り返した。なぜ別れたいのか、その理由は曖昧模糊としたままだった。
嘘を隠し通せる人はいない。いくら平静を装っても、態度や口調、言葉の端々から微妙な違和感が生まれる。悲しいかな、精神科医として修練する中で、その“ぎこちなさ”を見分ける力が自然とついた。
1時間近く話しただろうか、彼女はほかに相手ができたのだと白状した。
「爽君のせいじゃないの。ごめんね」
電話口からすすり泣きの声が聞こえてくる。理由を知りたいと思った。しかし、何を聞いても答えは返ってこない気がした。私はそれ以上何も追及できなくなっていた。