初期研修医となった駒木爽氏の同期の中で、群を抜いて優秀だった「杉ちゃん」。周囲の期待を背負い、激務の循環器内科で連日夜中まで働く彼女は、すでに医師としての風格を漂わせていた。だが、そんな彼女が突然、病院から姿を消す。いつも一番早い彼女のデスクに鞄はなく、携帯にも一切応答がないという。彼女に何が?
現在は精神科医である駒木爽氏の新刊『精神科医おどおど日記——閉鎖病棟24時、本日当直、あらゆる精神疾患寝ずに診ます』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。なお、プライバシー保護のため登場人物の名前は仮名、一部のエピソードに脚色を加えている。(全2回の1回目/続きを読む)
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優秀な同期
医学生は医学部を卒業すると、まず初期研修医として2年間、特定の専門科を絞らず、内科・外科・救急・小児科・産婦人科など主要な診療科をローテーション(回遊)して医師としての基本を勉強する。
初期研修医が勤務するのは、国から「臨床研修病院」として指定された病院に限られる。私が選択したのはN県にある市中病院で、さまざまな医大から集まった10名の同期たちと研修医寮に住み込み、医療現場で働くことになった。
10名の同期の中で、群を抜いて頭の回転が早く、医師としての技量が高かったのが杉野舞さんだった。ふだんは小柄でニコニコしているのだが、白衣を身につけると人が変わったように目つきが鋭さを増す。真面目で努力家であり、どの診療科に行っても「将来うちの科に来ない?」とスカウトされた。
一緒に救急当直中のこと。既往症を持つ重症感染症患者の対応において、私が組み合わせの悪い抗菌薬を選択してしまった。彼女は自分の患者の対応中にもかかわらず、「その薬、使わないほうがいいよ」とさりげなくアドバイスをくれた。
私の担当患者のカルテまで把握していたのだ。医者になってからの期間は同じなのに大きな実力差を見せつけられた。
