巨匠・是枝裕和監督作でカンヌ出品作と聞けば、ちょっとすましたホームドラマかしらと思いきや近未来SF。しかも“クセがスゴすぎる”キャスティング。ホンマに大丈夫? ドキドキしながら、チェックしてきました!

今週のターゲット『箱の中の羊』

〈あらすじ・概要〉『そして父になる』『万引き家族』の是枝裕和監督が、約8年ぶりに手掛けたオリジナル脚本作。死んだ息子そっくりの“ヒューマノイド”を迎え入れることになった夫婦を描く近未来SF。綾瀬はるかと大悟による夫婦役も話題。息子役は200人以上のオーディションから抜擢された新人の桒木里夢(くわきりむ)。125分。公開中。

 

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 今回は大人の街・日本橋のTOHOシネマズへ。平日昼下がりの客席はオシャレなマダムや落ち着いたシニア層が中心。ちょっぴりエレガントな空気の中で調査開始です。

 さて、先月フランスで開催された第79回カンヌ国際映画祭のコンペ部門に選ばれたことでも注目の本作。でも最大の話題は、綾瀬はるかと大悟が夫婦役!という大胆キャスティングですよね。

 物語の舞台は、佐川急便がドローンで荷物を配送する近未来。最愛の息子を不慮の事故で亡くしてしまった夫婦のもとに、息子そっくりの姿をしたヒューマノイド(=人型ロボット)がやってくる、というお話。相手が機械だとわかっていても、すがりつくように愛情を注ごうとする綾瀬ママ。対して大悟パパは、「いや、これ機械やん」と、素直に受け入れられません。

 ちなみに綾瀬ママは建築家、大悟は工務店の社長という設定。これが案外お似合いなところが是枝マジック! “クセがスゴい”お笑い芸人としての顔を封印した大悟が、どこにでもいる平凡な夫婦の空気感を見事に体現。奥さんを優しく気遣いながらも、身代わりの存在への違和感に苦悩する切ない表情といったら……。予想を裏切るリアルなパパっぷりに、思わず胸がギュッとなりました。ただ、冷静に見れば、日本を代表する女優との演技力の差は歴然。まあ、そりゃそうか。

 テーマは身近な人や大切なものを失った悲しみを癒やし、再出発を図る「グリーフケア」。加えてヒューマノイドを通じて描かれる「シンギュラリティ」――いわゆる人工知能が人類の知能を超える転換点にも挑んでいます。そうしてみると、家族ドラマ部分はさすが監督のお得意分野。喪失を抱えた夫婦のすれ違いは胸に迫ります。ヒューマノイドをめぐる二人の対立も、AIの是非よりも“悲しみとの向き合い方の違い”として描かれていて見応え十分でした。

 一方、ヒューマノイドが自我を獲得していく展開の後半は、丁寧には作られているものの正直ちょっと物足りない。そもそも「人間とは何か」という問いは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『A.I.』(01)を始めとして、多くのSF映画が繰り返し扱ってきたテーマでもあります。われらが是枝監督のオリジナル作と思えばこそ、「キャスティング以上に大胆な一手を見てみたかった!」と感じるのは欲しがりすぎでしょうか?

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