メディアに報じられにくい「未産うつ」の問題
――不妊治療は心身の負担が大きく、やめ時の判断が非常に難しいと聞きます。
くどう 治療はすぐに結果が出るものではなく、期待と落胆を繰り返すジェットコースターのような日々が続くといいます。「体外受精は3回まで」「42歳まで」と事前に期限を決めてすっぱりやめられる人もいれば、「あと1回だけ……」となかなか区切りをつけられないケースも少なくありません。
不妊治療に5~6年くらいかける人もいますし、多額の資金を費やした方ほど、「今までの苦労を無駄にしたくない」とやめ時がわからなくなってしまうようです。保険適用になる前から治療を続けていて、数百万円、ときには1000万円と費やした人からは「治療をしている方が精神的な安定が保たれた」といった声も聞きました。
――治療を終えた後も、心の立て直しには長い時間がかかりそうですね。
くどう 「不妊治療中も辛かったけれど、やめた後の方がもっと辛い」という声はよく耳にします。治療中に仕事をセーブしていた人は、やめた途端にぽっかりと時間ができてしまう。否応なしに「子どもがいない人生」と向き合わざるを得なくなり、しばらく誰とも会いたくなくなってしまう人もいます。
メディアでは「産後うつ」や「育児の大変さ」は頻繁に取り上げられますが、実は「未産うつ」で深く苦しんでいる方も大勢います。
治療を終えて前を向こうとしている時に、芸能人の高齢出産のニュースを見た周囲から「まだ頑張れるよ」「病院を変えてみたら?」と言われ、再び気持ちが揺さぶられてしまうこともあります。
――その一方で、自ら子どもを望まない方々に対する偏見も根深いのでしょうか。
くどう 20~30代の若い世代では少しずつ価値観が変わってきましたが、未だに「子どもはほしくない」と言うと冷淡な人だと思われたり、「産んだら可愛いよ」と相手の気持ちを置き去りにしたアドバイスをされたりします。
また、「子どもがいない=自由気まま、悠々自適、仕事を生きがいにしているバリキャリ」と極端に決めつけられることもあります。「無理なく、ゆるく働きたいだけ」と思っていても、先入観で見られてしまうことも。
これもやはり、周囲が「自分基準」で物事を捉えてしまっている表れなのだと感じています。(つづく)
