なぜ、医学・医療において性差を考慮する必要があるのか? 女性の健康に特化した初の国の研究・診療拠点「女性の健康総合センター(ICWH)」でセンター長をつとめる小宮ひろみ氏が、性差医療の意義を解説する(取材・構成 秋山千佳)。

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男性の体が「デフォルト」とされてきた

 男女の体は、細胞ひとつ取っても違うことをご存じでしょうか。

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 細胞の核には染色体があります。XXとXYと言えば生物の授業を思い出す人もいるでしょう。性染色体というと精子や卵子のイメージが強いと思いますが、実は一つひとつの細胞に性があるとされています。

国の研究・診療拠点「女性の健康総合センター」でセンター長をつとめる小宮ひろみ氏 ©文藝春秋

 もう一つ、男女の違いの代表的なものがホルモンです。女性ホルモンのエストロゲンや黄体ホルモン、男性ホルモンのテストステロンによって、男女の差は大きくなります。

 こうした性差がありながら、医学・医療においては長らく、男性の体がデフォルト(標準)とされてきました。その結果、月経や更年期障害といった女性の健康課題が軽んじられたり、病気によって女性の死亡率が男性より高くなったりする弊害が生じてきたのです。

 この偏りをなくそうと、米国では約40年前から性差を考慮する性差医学・医療が進展してきました。

 日本は欧米に比べて遅れていましたが、2024年10月、女性の健康に特化した初の国の研究・診療拠点として「女性の健康総合センター(ICWH)」が設立されました。私はセンター長を拝命しました。

2025年に国立成育医療研究センターを視察する高市早苗氏 Ⓒ共同通信社

 高市早苗首相は昨年10月の所信表明演説でICWHに触れ、次のような展望を述べられています。

「本センターを司令塔に、女性特有の疾患について、診療拠点の整備や研究、人材育成等に取り組むなど、その成果を全国に広げてまいります」

 経済産業省の試算では、女性の健康課題による日本社会の経済損失は年3.4兆円と推計されています。また、我々の研究では、家庭内のメンタルヘルスにも女性の健康課題が影響することが判明しています。

 逆に言うと、女性の健康を底上げすることができれば、家庭や職場に良い効果をもたらし、社会全体をよくすることにつながるわけです。

 誰にとっても他人事ではない性差医療、女性医療について、またICWHが果たす役割について、お話ししていきたいと思います。