「草原の人」は、歌謡界の女王と呼ばれた歌手・美空ひばり(1989年死去)が残した詞につんく♂が曲をつけたものだ。松浦は自分が歌うと言われた当初、美空ひばりのことをよく知らず、さほど重くは受け止めなかった。だが、周囲からすごいことだと言われ、話を聞いたり、資料を見せてもらったりするうち、だんだん美空ひばりの偉大さがわかってきた。さらに寝る前にちょっと見ておこうと思い、ひばりのライブや少女歌手時代のビデオを見始めたところ、その目力に吸い込まれるようにして見入ってしまい、こんなすごい人の歌を自分が歌っていいのかと怖くなったという。
「松浦亜弥はけっして負けてないと思う」
このとき初めて「歌えない」と思った松浦は、プロデューサーのつんく♂に相談すると、「松浦は松浦なんだから、自分なりに歌いな」という答えが返ってきた。さらに「美空ひばりさんはすごい方だけど、美空さんが15、16、17のときと、松浦亜弥が15、16、17のときはけっして負けてないと思う」とも励まされた。そう言われて松浦は、プレッシャーから解放され、壁を乗り越えることができたのだった。
松浦が美空ひばりから受けた影響は大きく、のちにつんく♂のプロデュースを離れて歌手活動をするようになってからも、《美空さんのすごさは、メロディを伝える以前に言葉がはっきりと伝わること。ここからここまではきっと自分の気持ちを繋げて伝えたかったんだな、ということがすぐよく分かる》と語っている(『ミュージック・マガジン』2006年12月号)。(#2につづく)
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