「部下として」に込めた意味
――本当に激動の中でAIと向き合ってこられたわけですが、今回『部下としてのAI』というタイトルがとてもいいなと思ったんですね。ツールとしてのAI本はたくさんあると思うんですけど、あえて「部下として」とされた理由を教えていただきたいです。
牛尾 元々の背景は、メンターのクリスが1on1で言った言葉がすごくインパクトがあったんですね。「僕らはもはや、エージェントのマネージャーだよね」と。彼は本当にマジで世界一流で、マイクロソフトの中でもフラッグシップになるようなサービスをいくつも開発している人がそう言った。本当にそうだなと思いました。
使い倒している人はみんなわかっていると思うんですが、AIは簡単にアホになりますよね。賢いけどよくアホになるし、嘘もつく。東大出身で俺より明らかに賢いはずなのに、業務ができなくて嘘もつく部下というイメージです。そこでいかにアホにならないようにするのがAIを使った開発の肝なので、そこから今回のタイトルは来ています。
――「部下として」と考えると、AIを使いこなすのはマネジメントする側の問題だと実感できますね。あとお聞きしたかったのは、AIにはけっこう雑な指示をしても、それなりに返してくるじゃないですか?
牛尾 それっぽいのをね(笑)。
――牛尾さんは、大雑把な指示はダメなんだとお書きになっていましたが、そのあたりの理由を改めて教えてください。
牛尾 人間で考えてみてもそうじゃないですか。さっき言ったみたいに東大出身でめちゃ賢い、知識はあるけどたまに嘘つくし、突然アホなことし出す――そんな新入社員がいたとしましょう。「君、あれやっといて」でちゃんと仕事ができると思いますか?
――それは無理ですよね。
「明確化する」と爆発的な結果を出せる
牛尾 そう、まったく同じなんですよ。だから最初面倒くさいと思うかもしないけど、賢いそいつの頭を利用するんです。ちゃんと話をして、「こういう感じのをやればいいんじゃないかな」「こういうアイディアがありますよ」みたいに話していって、「こういうものを作ればすごくいい感じじゃない」というところまで行く。僕らは「クラリファイ」という言葉を使うんですけど、「明確化する」。
これって実はソフトウェアの開発でも一緒です。アメリカの場合は最初からかっちりしてないんで、めっちゃふわっとしたやつが上から降りてくるんですよ。「牛尾君、大体これして」みたいなのが。その時点では誰も何もわかんないですよ。だからそれを明確化するところからスタートする。スペックを考えて、ベテランの人にシェアして「これどう思う?」と聞いたりしながら、明確にしていくんですよね。「これで作り始めれるね」となったところで、プロトタイプを作って、実際やってみるんですよ。
だからAIとしゃべって、そういうクラリファイを同じようにやって、「これでもうそろそろ勘違いしないな」となったら作業をお願いする。するとAIが30分とか一時間かけてやってくれるんで、そしたら次のAI二号君とお話をするというノリですね。
――本当になるほどなと思いました。こういうことをやっていくんだっていうところまでちゃんと話して、しっかり定義して、詰めていってから作業させると、一気に爆発的にすごい結果を出すという。
これって逆に言うと、リアルな部下とか後輩に対しても同じだ、という気づきも得られた気がします。
牛尾 人間の知識をAIは学習していますからね。ソフトウェアの世界に「コンウェイの法則」というのがあって、「ソフトウェアの構造は、それを設計する組織の構造と同じになる」という原則があるんですけど、それと似てるかもしれないですね。AIは人間から学んでいるので、人間に似ています(笑)。
(フルバージョンは動画の視聴をどうぞ)
INFORMATION
『部下としてのAI 』刊行記念
牛尾剛✕勝間和代(特別ゲスト)
「AIで仕事と人生をイージーモードに!」
日時 7月29日(水)19時~20時30分 青山ブックセンターにて
詳細 https://aoyamabc.jp/products/2026-7-29
