無法地帯と化した深夜1時のスクランブル交差点
試合当日、深夜1時の渋谷。スクランブル交差点に近づくにつれ、地鳴りのような声と喧騒が大きくなってくる。試合開始前の時点ではまだ警察による厳密な交通規制が敷かれておらず、スクランブル交差点は無法地帯状態と化していた。
「ジェットコースター乗るときくらいドキドキする!」
「でも、行くべ、行くべ?」
「うおー!」
信号が青に変わるやいなや、叫びながら横断歩道を疾走し、中央付近では人が巨大な群れになり、飛び跳ねながら声にならない雄叫びを上げる。ただまっすぐ対岸へ道を渡ろうとするだけでも、後ろから猛ダッシュで駆けてきた人と何度か体が激しくぶつかった。アスファルトに転倒する危険を感じながらの、決死の横断である。
グループステージ第3節でスクランブル交差点を訪れたときは、熱気こそあれどこれほどまでの騒動にはなっていなかった。試合開始時刻や、対戦相手のネームバリューの違いで、喧騒の性格は変わってくるだろうと想定こそしていた。それでも、これほどまでとは……。
ボディペインティングが一際目立っていた、陽気な男性がいた。彼はこれからスポーツバー「HUB」で仲間と試合を観戦するそう。試合結果の予想を聞くと「100-0で日本!」と豪語する。あくまで取材班の印象にすぎないが、堅実な試合運びが予想されたスウェーデン戦時の渋谷と比べ、負けたら終わりのトーナメントでのブラジル戦、そのお祭り騒ぎ、騒擾そのものを楽しもうとする人が多いように感じられた。
狂乱のスクランブル交差点を背に、センター街を松濤方面へ抜けた先。そこでは「○○○○のご利用は?」と通行人に声をかける男女の姿があった。どうやら近隣のクラブのスタッフによる熱心な呼び込みのよう。しかし、「さすがに今日はダメだよな、テレビないと」と、声かけの成果が上がらないことを嘆いていた。
それでもスタッフは諦めず、精力的に道行く男性グループに声をかけ、たくさんの女の子が来場していることをアピールしつつ、「クラブとかバーでサッカー観るんじゃなくて、中で女の子お持ち帰りして、ホテルで(試合を)見た方がいいよ」と露骨に水を向ける。その気になった学生風の男性は、「サッカーよりも少子高齢化問題の方が大事ですもんね」「こちらも“試合開始”できるように頑張ります」とウィットに富んだ返しを残し、吸い込まれるようにクラブのエントランスへと向かっていった。渋谷の夜の欲望は、サッカーの熱狂と複雑に絡み合っている。



