狂乱の先制点、ビールまみれの歓喜、そして…

 そして迎えた午前2時のキックオフ。ガラス張りの店内で試合映像を流しながら営業する路面沿いの居酒屋では、店の外の道路にまで人が密集し、日本代表を応援するチャントが大合唱される。ハイドレーションタイムには、店全体でジョッキを掲げて乾杯が交わされていた。

道から店内のテレビ画面を見る

 道端から戦況を見守っていた男性に、なぜわざわざ深夜の渋谷で試合を見るのか尋ねると、「本当は生で見たいけど、金がないんでさすがにアメリカには行けないんです。いちばん生に近いのはココじゃないですか」と笑う。日本が点を取った瞬間か、歴史的勝利を収めた瞬間には、スクランブル交差点へと全力で駆け出す予定だという。

スマートフォンで戦況を見守る姿も

 すると前半29分、ついに試合の均衡が破れる。日本が佐野海舟選手の鮮やかなミドルシュートで先制したのだ! 途端に、街のあちこちから地鳴りのような大歓声が沸き起こる。たまらず走り出している人も少なくない。あるサポーターは、先制の瞬間は興奮のあまり「酒をかけまくって」大騒ぎになったと当時の狂乱を振り返った 。 

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得点の瞬間。ワッと沸いて大盛り上がりだった

 この先制点以降、周囲の会話のトーンが少しずつ、しかし確実に変わってくる。

「このままいったら、ヤバくね?」

“日本代表の勝利”に対し、「これはもしかすると、本当に歴史が変わるのでは……」といったヒリヒリするような空気が漂ってきていた。

 その後、同点に追いつかれても、その期待感の空気はすぐには消えなかった。「相手はブラジル、これくらいは想定内」というわけだ。

「こっからこっからみたいな感じだった」。そう、ある男性が語ったように、日本代表も渋谷に集ったサポーターも希望を捨てていなかった。しかし、ピッチ上の現実は厳しく、ずっとじわじわ押し込まれる試合展開でもあった。